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2004/12/03

<鳳仙花>◆歴史認識欠いた中山文科相暴言◆

 房総半島の突端の小高い丘に「噫(ああ)従軍慰安婦」と刻まれた鎮魂碑がある。戦後、赤線の廃止で行き場を失った女性たちの自立を助けようと、ここに「かにた婦人の村」を開設した故・深津文雄牧師が建立したものだ。村には韓国人の元従軍慰安婦もいて、慰安婦問題で韓日関係がギクシャクしたとき、心を痛めた深津牧師が歴史の真実を忘れないためにと碑にした。その願いが、また踏みにじられた。

 中山成彬文部科学大臣が、「歴史教科書からいわゆる従軍慰安婦とか強制連行とかいった記述が減ってきたのは本当に良かった。これは変えるべきだと考えていた」と発言した。教科書検定の最高責任者である文科大臣がこのような発言をするとは、見識を疑いたくなる。しかも、韓日中の首脳会談がまさにラオスで開かれようとしていた時期であり、東アジアの連帯を強めようというときに、この大臣の発言は、3カ国の友好に水を差すものだ。アジア諸国がいかに歴史に敏感であるか、それを知らないはずはないだろう。

 この間、従来と違い冷静な報道に徹してきた韓国のメディアも、さすがに「これでは常任理事国入りを支持できるはずもない」と厳しく批判している。せっかく「韓流ブーム」で韓日関係がかつてない成熟期を迎えようとしているときに、このような発言がなされたことは残念でならない。

 韓国では、思いもよらぬ文科大臣の発言で、今後、日本で使われる歴史教科書から過去の韓日史の記述が後退するのではないかと憂慮している。日本がきちんと歴史教育をしなければ、韓国や中国と共通の価値観を持つことは不可能で、いくら韓日友好、アジア共同体構想を叫んでも、画餅にすぎなくなる。

 日本の大臣の「妄言」は、これまで何度も繰り返されてきた。次の「中山発言」が飛び出さないとも限らない。閣僚の選出に際しては、きちんと資質を見極め、それにふさわしい人物を配置することが肝要だと思う。(H)