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2004/07/09

<鳳仙花>◆閉ざされた管理職への道◆


 
 東京都の保健師で、94年に管理職試験の受験を外国籍を理由に拒否された鄭香均さん(54)が、「国籍差別だ」として訴えた裁判の最高裁判決が、10月末にも出るという。

 だが、勝訴した高裁判決がひっくり返る恐れがある。9月に最高裁で口頭弁論が開かれることが決まったからだ。過去、口頭弁論が行われる場合はほとんど高裁判決が見直されており、とても心配だ。

 同裁判は96年5月の東京地裁判決で、「憲法は外国人の公務員の就任までは保障していない」として事実上門前払いだった。しかし、97年11月の第2審では、「国の公務員にも地方公務員にも在日外国人が就任できる職種があり、憲法の保障が及ぶ」とし、特に地方公務員については、「国の公務員と比べ、就任し得る職種の種類は広い。外国人を任用することが許される管理職もある」と、国籍条項を「違憲・違法」とする画期的な判決を下していた。

 その高裁判決から7年も経った。ここまで判決を引き延ばしているのは過去に1件しかない。「意図的に引き延ばしたとしか思えない。人の人生をどこまで翻弄するつもりなのか」と憤る鄭さんの胸中を思うと、やるせなくなる。

 鄭さんは86年、東京都が保健婦・看護婦の国籍条項を撤廃したのを受けて保健婦の資格を取った。外国籍保健師の第1号である。88年東京都の職員になり、94年管理職試験の受験資格を満たし、上司の勧めもあって受験しようとしたところ、外国籍を理由に拒否されたのである。長年保健師の仕事をしてミスもなく、能力を買われていた。だが、管理職の道を閉ざされたまま10年になる。どれほど悔しかったことだろう。

 鄭さんは父親が在日1世、母親が日本人だ。日本国籍を取得する方法もあったが、外国人として人権を求める生き方を選んだ。今回の裁判も、「差別のない平等な社会作りの一助になれば」との思いで闘い続けている。

 この間、多くの政令指定都市や都道府県で時代の流れになっている国籍条項撤廃。最高裁の良識を期待したい。(L)