ここから本文です

2004/04/23

<鳳仙花>◆映画で知る韓国戦争◆

 韓国で観客動員1000万人を突破した大ヒット映画『ブラザーフッド(原題・太極旗を翻して)』の6月日本公開が決定した。

 1950年に勃発した韓国戦争に従軍した兄弟をテーマにした映画で、韓国戦争の実態が描かれた大作だ。

 民族の大悲劇である韓国戦争は、重要なテーマとして映画に描かれ続けてきた。これまで作られた映画は100本以上にのぼるが、その内容は時代状況を反映している。

 韓国映画史上ベストワンの評価を受けている『誤発弾』(61年)は、貧困と精神的苦痛にあえぐ傷痍軍人、南大門前で春を売る女性たち、北からの避難民で精神をおかしくした老母など、戦後の荒廃と後遺症に苦しむ人々の姿が巧みに表されたリアリズムタッチの作品で大きな反響を呼んだ。

 しかし軍事政権が樹立されると、『帰らざる海兵』(63年)のように、国軍の活躍と反共意識を鼓舞する作品が中心になっていく。さらに80年代に入って離散家族問題が話題になると、『キルソドム』『その年の冬は暖かかった』など、離散家族の再会に焦点を当てた映画が作られた。

 そして最近では、南北スパイの暗闘を描いた『シュリ』、軍事境界線の南北兵士の交流を描いた『JSA』など、北朝鮮の軍人にも人間味を与えた作品というふうに、世代を継いで作られている。

 これらの作品は日本でも公開され、南北分断の問題を日本の若者に伝える一助を果たしたが、21世紀に登場した『ブラザーフッド』は、日本でも人気の若手スター共演とアクションシーンをうたい文句にしつつ、家族愛、戦争の愚かさ、そして分断の悲劇を主張した作品に仕上がっている。

 韓国エンタテインメントに関心はあっても歴史に関心ある人は少ないと、最近の文化交流への不満が寄せられることがあるが、『ブラザーフッド』を見た若者は平和や歴史に関心を持ってくれるだろう。

 試写室では、引き裂かれた家族の苦しみを見て何人もすすり泣く声が聞こえた。公開が待ち遠しい。(L)