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2004/02/20

<鳳仙花>◆ある在日老学者の闘い◆

 歪んだ日本の韓国観をいかに是正すべきかー生涯に渡り奮闘を続けている在日の歴史学者がいる。花園大学文学部客員教授の姜在彦さん(77)である。

 70年代、李進熙、金達寿氏ら在日学者有志で雑誌「三千里」を発行、韓国と日本の近代史についての様々な論文を発表した。

 「朝鮮近代史」「在日朝鮮人渡航史」「近代朝鮮にとっての日本」など、それまであまり触れられなかった韓日近代史を精力的に取材・著述し、史実に基づいた隣国理解を訴え続けてきた。

 その姜さんが先頃、妻で経済学者の竹中恵美子さん(74)=大阪市立大学名誉教授=とともに夫婦初の共著「歳月は流氷の如く」(青丘文化社)を出版した。

 青年期から現在に至る歩みをまとめたもので、革命家を志し日本共産党で活動した若き日々、朝鮮総連と思想問題で決別した苦い体験、そして在野の歴史学者として再スタートし、日本の韓国観是正に取り組んだ日々が率直に語られている。

 姜さんの著書は、在日学生が韓国の歴史を勉強する際に重宝だった。学生時代に「朝鮮の歴史と文化」など興味深く読んだ記憶があるが、こういう人生経験を経て執筆してきたのかと思うと、感慨深いものがある。

 姜さんが竹中さんと一緒になったのは55年。民族差別がまだ強かった時代で、家族に反対された竹中さんは実家との縁を切る形で結婚した。

 姜さんも「植民地時代を忘れたのか」と家族に非難されたという。生活苦の中、姜さんは竹中さんにまず原稿を見せ、「文章を直す参考にした」と感謝している。

 歴史研究の「種を播く人」として生きてきた姜さんは、現在も雑誌に韓国史を連載中だ。(L)