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2006/09/08

<鳳仙花>◆韓国映画の進化◆

 韓国映画がこの数年、次々と観客動員数を塗り替える話題作を送り続けている。ざっとあげても、「シュリ」「チング」「シルミド」「ブラザーフッド」と続く。すべて日本でも公開され、韓国映画のテーマ性を強く印象づけもした。最近も「王の男」が1230万人(112日)で歴代最高の観客動員数を塗り替えたばかりだが、今夏封切られた「グエムル 漢江の怪物」(ポン・ジュノ監督)は、公開38日目で1240万人に達した。

 なんと、15歳以上の国民の3人に1人以上が見た国民的映画になる。この映画は今年のカンヌ映画祭でも絶賛された話題作。日本でも先週末から公開されたので見に行ったが、納得がいった。なかなかに面白いのである。ハリウッドや日本などでつくられた怪獣映画やパニック映画と違い社会批判性が滲んでいるのもわさびが利いていていい。

 それは映画の冒頭、漢江沿いの米軍基地で埃をかぶった瓶に入っている毒薬の不法投棄を命じる米国人に象徴される。それが原因で生まれた怪獣が河川敷の売店一家の娘を連れ去り、家族が協力して怪獣と戦い、救出するというストーリーだ。

 娘を取り戻そうと死に物狂いの駄目親父(ソン・ガンホ)の熱演が光るが、飲んだくれだが学生の時に民主化運動をした弟が火炎瓶で戦い、知り合った浮浪者が怪獣にガソリンをかけ、アーチェリーの銅メダリストの妹がとどめを刺すという、それぞれの設定が韓国の時代状況を反映していて納得がいく。政府や役人、駐韓米軍は全く当てにならない。その描き方自体が、いざとなれば結束するという韓国の家族主義の思想なのかも知れない。

 韓国映画史上、忘れることのできない名作に、パンソリ芸に心血を注いだ「風の丘を越えて」や、南北分断の現実を深く考えさせる「シュリ」がある。「グエムル」はまた一つ新たなジャンルを開拓したといえそうだ。韓国映画の進化と呼びたい。(S)