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2006/06/30

<鳳仙花>◆尹東柱の新たな詩碑◆

 どこの国でも、夭逝した詩人や歌手、作家などは人々の記憶に永く残るものだ。韓国の「抵抗詩人」尹東柱(ユン・ドンジュ)もそんな一人だ。

 尹東柱は植民地時代に日本の大学(立教・同志社)に留学、1943年京都で警察に逮捕された。韓国語での詩作活動が独立運動とされ、治安維持法違反容疑で捕らえられたものだ。それから2年後、45年2月に旧福岡刑務所で27歳の若さで獄死した。1冊の詩集を出しただけの詩人だが、命の危険を感じながらも、禁止されていたハングルで詩を書き続けた若者の信念、民族的自負心が伝わるゆえに、「国民的詩人」として今も愛されているのだろう。

 日本でも近年、尹東柱への関心が高まっている。詩集や研究書の日本語訳が出版され、95年には没後50年を記念して同志社大学に詩碑が韓日有志によって建てられた。そして今回、尹東柱が逮捕されるまで暮らしていた「武田アパート」跡地の京都造形芸術大学高原校舎に、「序詩」と尹の年表が彫られた詩碑が建立された。

 韓国の詩人の詩碑が、日本の2つの大学に建立されるのは極めて異例なことだが、それだけ尹東柱の詩や人生が人々の心を打つのだろう。

 23日に行われた除幕式には妹の尹恵媛さん(81)も駆けつけ、「兄の詩が民族を超えて愛されていることに感謝します」と述べている。

 「死ぬ日まで空を仰ぎ/一点の恥辱なきことを/葉あいにそよぐ風にも/わたしは心痛んだ/星をうたう心で/生きとし生けるものをいとおしまねば/そしてわたしに与えられた道を/歩みゆかねば」(『序詩』より)「わたしを呼ぶのは誰か/一度も手をあげられなかったわたしを/どこにわが身を置く場があると/わたしを呼ぶのか」(『恐ろしい時間』より)と歌いながら、尹東柱は時代に立ち向かおうとした。その清らかな精神、人間性が両国の若者に伝わっていくことは喜ばしい。(L)