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2006/03/09

<鳳仙花>◆スポーツ界の在日同胞達の活躍◆

 スポーツ界や芸能界で、在日の出自を明らかにする人はまだまだ少ない。本人が名乗りたくても、所属事務所など周囲がストップをかけるケースも多いようだ。

 先月27日、WBCスーパーフライ級タイトル戦で米国のホセ・ナバーロを破り、9度目の防衛を果たしたチャンピオン、洪(徳山)昌守(31、金沢ジム)は、早くから本名を明らかにした数少ない在日3世だ。

 洪は90年、東京朝鮮高級学校ボクシング部に入部し、東京都高校ボクシング新人戦で優勝した。

 本来なら優勝者は都代表でインターハイに出場できるのだが、当時はインターハイへの朝鮮学校生の出場資格はなく。断念せざるを得なく、悔しさにじっと耐えた。

 プロデビューを果たした際、本名での登録を希望したが諸般の事情でできなかった。その代わり、在日であることを公言した。「自分を隠す生き方は絶対にしたくない」。これが洪の信条である。

 そんな洪の姿に、朝鮮学校の同級生を中心に応援の輪が広がっていった。白地に青で半島をかたどった統一旗を会場に掲げ、「イギョラ(勝て)」の声援を叫ぶ応援団は他に例がない。

 一方、昨年のW杯予選でサッカー北朝鮮代表に選ばれた在日3世Jリーガー、安英学は、スポーツに国境はないこと、朝日友好を願っていることを強調して、平和大使的な役割を果たした。狭間に立つ在日の立場を、逆に活用したといえる。

 2人には心ない嫌がらせも来る。だが洪も安もそんな事はおくびにも出さず、スポーツに専念している。

 その真摯な姿勢が共感を呼んでいる。

 洪は防衛後、「引退するかどうか、ゆっくり考えたい」としている。安は「祖国でプレーしたい」と、韓国Kリーグに今春移籍した。今後の活躍を大いに期待したい。(L)