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2006/02/17

<鳳仙花>◆日本国籍取得論の行方◆

 先日、民族心が強く、娘の結婚も相手は絶対に韓国人でないと認めないという先輩(64)が、「もう3世の時代であり、これからは日本国籍を取得して日本政治に参画していかなればならないのではないか」と話した。帰化に絶対反対していた先輩だけに少し驚いたが、最近私たちの周辺で日本籍取得論議をする人が増え、運動も起こっている。

 これまで、「帰化すれば同化してアイデンティティーがなくなってしまう。民族を裏切るな。過去の歴史に敗北してはならない」という帰化反対論は否定しきれないものがあった。事実、これまで20万人ほどが日本に帰化しているが、その多くが日本社会に埋没して、民族性を忘れ去らないまでも隠しているのが現実だ。このような状況の中、在日の世界は、いうならば歴史の呪縛のため身動きできない状態にあったといえる。

 それが明らかに変わり始めたのである。「在日コリアンにとっての権利としての日本国籍を」(明石書店)という本を読むと、日本国籍を取得したばかりの金俊煕氏(44)は、「日本国籍をただとればいいという問題ではなく、本名でとるようにすべきだ。アイデンティティーを残すことができなれば意味がない」という趣旨のことを述べている。

 日本国籍取得論にもニュアンスの違いがあるが、鍵を握るのは、「民族(本名)のままでの日本国籍取得」、つまり出自を明らかにしたコリアンジャパニーズである。在日組織である以上、民団、総連もこの問題をタブーとせず真剣に論議すべきではないか。

 日本政府は、少なくとも歴史的に特殊な立場にある46万人の特別永住権者(戦前から引き続き日本に居住している韓国・朝鮮人及び台湾人とその子孫)に限っては、申請だけで日本国籍を取得できるように法制化すべきではないか。法務大臣の裁量権に委ねられた帰化行政を転換する時代だと考える。

 私たち日本生まれれの在日は国籍のことで悩むことなく、世界的、普遍的なことにもっと挑戦したいのである。(S)