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2007/11/23

<鳳仙花>◆南北に響くNYフィルの調べ◆

 1989年のクリスマスの日に、歴史に残る演奏会がベルリンで開かれた。東西ドイツの統一を祝し、ニューヨークフィルなど世界の主要オーケストラが集結、ベートーベンの第九を演奏した。指揮は、NYフィルを育てた故レナード・バーンスタインで、合唱に入り、通常「フロイデ(友よ)」と歌うところが「フライハイト(自由)」に変えられ、実に感動的だった。

 そのNYフィルの平壌公演が実現する。国際ラジオ放送VOA(ボイス・オブ・アメリカ)が伝えたところによると、来年2月26日に平壌で演奏会を開くことが決まった。すでに関係者が平壌を訪問し、演奏会場や団員の宿泊施設などを点検するなど、準備作業に入ったといわれている。

 NYフィルのような西側のトップレベルのオーケストラが北朝鮮で公演するのは初めてで、画期的なできごとといえよう。朝米関係の関係改善に資するだけでなく、西側と北朝鮮の文化交流の起爆剤になると期待したい。

 さらにNYフィルは、平壌公演のあと、通常の中国ルートを経ずに韓国を直接訪れ、ソウルで演奏会を開くことにしており、南北同時公演が実現する。これも前例のない快挙であり、南北に同じオケの響きが高鳴る意義は大きいと思う。

 音楽には、人間に夢や希望を与えたり、悲しみをいやす大きな効果がある。かつて、旧ソ連がショスタコービッチの音楽が反体制的だと弾圧したり、イスラエルがナチスの御用音楽だったワーグナーを禁じたことをみても、音楽には魔法のような力があり、その果たす役割は計り知れない。

 今回のNYフィルの平壌公演が、北朝鮮の体制と社会を変えるきっかけになればと思う。そして、近い将来、板門店に世界のオケが集まり、韓国が生んだ世界的指揮者・鄭明勲氏の指揮で第九を演奏し、南北統一を祝う日が来ることを願う。(G)