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2007/01/12

<鳳仙花>◆即席めん発明者の願い◆

 「食足世平(しょくそくせへい)」(食が足りてこそ世の中は太平)。インスタントラーメン(即席めん)を世界で初めて開発した日清食品創業者会長の安藤百福さんが、自身で作った四字熟語だ。「食を通じて世の中の役に立つ」ことを誓い、日清食品の企業理念にもこの言葉を取り入れた安藤さんは5日、体調を崩して96歳で亡くなった。

 昨年4月、ソウルで開かれた世界ラーメン協会総会に出席するため訪韓した際には、一人当たりの年間ラーメン消費量が韓国は84食(日本43食、中国40食)と、世界最高のインスタントラーメン大国であることを、大いに喜んだという。

 1910年台湾生まれで、本名は呉百福。1933年に渡日。戦争が終わると、「戦後復興にはまず飢えからの解放だ。食からすべての建設は始まる」と決意し、食品事業を起こした。その後、理事長に就いた信用組合が倒産し全財産を失う苦難も経験した。

 1958年、即席めんの開発に成功し、同年8月、世界初の即席めん「チキンラーメン」を1袋35円で売り出し、爆発的な人気を呼んだ。追随業者が多く出て粗悪品を売り出すと、品質を維持するために商標・特許の登録を行った。しかし、64年に一社独占をやめ、製法特許権を公開・譲渡。これが世界中に即席めんが広まる契機となった。

 韓国に伝わったのもこの時期で、食料不足の韓国民に多大な恩恵をもたらした。いまでは60社が年間36億食の即席めんを販売し、一部は日本に輸出するほど市場が拡大している。

 安藤さんが会長を務める世界ラーメン協会は、インド洋大津波や米国でのハリケーン被害など大規模な災害が起こると、非常食として即席めんを送った。そして、来年大阪で開催される世界ラーメンサミットで、「災害援助ラーメン基金」を創設する計画だったという。「食足世平」を願い、韓日両国を始め世界の食文化の向上に貢献した安藤さんの冥福を祈る。(L)