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2008/09/05

<鳳仙花>◆苦境の在日向け介護事業◆

 現在、日本では高齢者の4人に1人が認知症を発症する可能性があるという。「鉄の女」といわれたサッチャー元英国首相も認知症にかかったことを最近公表して、話題になった。
認知症問題は高齢化が進む在日社会でも深刻化しており、以前、テレビディレクターの在日2世・玄真行さんが、認知症で韓国語しか話さなくなった実母の介護に苦悩する自らの家族の姿をドキュメンタリー作品に描いて、反響を呼んだこともある。

 これに取り組んでいる在日集団については、あまり知られていない。NPO法人「コリアン生活支援ネット『ナビ』」(林瑛純代表)は、そのようなニーズに応えようと4年前に発足した。

 同胞が多く住む東京の足立区・荒川区でケアマネージャー、看護師などの仕事を行ってきた在日2世の女性たちが、「韓国語の会話ができ、また在日の歴史・文化・生活をよく理解する同胞ケアスタッフによって、同胞高齢者や同胞障害者(児)の生活をサポートしよう」との思いで、手探り状態から始めた。

 病院食が口にあわず韓国食を欲しがる高齢者、前述のドキュメンタリーのように親が韓国語しか話さなくなった家族など、発足直後から相談が殺到し、在日専門の介護相談員がいかに望まれていたかを痛感したという。そのため在日ヘルパーの養成事業に2006年から取り組み、これまでに35人のヘルパーを誕生させている。

 4年間で活動の土台を築いた『ナビ』だが、いま大きな曲がり角に立たされている。日本政府の予算削減で介護事業への支援額が減り、在日専門であるがゆえに集客に限りがあり、『ナビ』は、他の事業所以上に運営が厳しくなった。

 会のメンバーは、「一人暮らしで『ナビ』の支援が不可欠な在日高齢者は数多い。頑張ります」と話している。在日介護事業を展開する数少ない事業所である。在日社会の更なる関心が寄せられることを期待したい。(L)