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2008/05/23

<鳳仙花>◆韓日友好に貢献する安聖基氏◆

 韓国の国民的俳優と呼ばれる安聖基氏が、第13回日経アジア賞(文化部門)を受賞した。同賞は、アジアの人々の生活を豊かにする上で功績のあった人を表彰するもの。「韓国の映画文化を代弁・保護し、韓日中を含めた国際合作映画の先駆けとなった功労を認める」というのが授賞理由で、俳優が同賞を受賞するのは極めて珍しい。

 映画制作者を父に持つ安氏は、5歳のときに「黄昏(たそがれ)の列車」でデビューした。以後、子役として活躍し、韓国外語大学在学時の休業を経て、78年に俳優業に復帰。80年に出演した「風吹く良き日」で、大鐘賞(韓国版アカデミー賞)で新人賞を受賞し、話題となった。

 ちなみにこの映画は、日本で公開された韓国映画の先駆けともいえる作品で、韓国映画の魅力を日本人に知らせる功績も果たした。

 安聖基氏は以後、第一線の俳優として活躍。社会問題をテーマにした作品にも数多く出演した。

 またこの間、96年には小栗康平監督の「眠る男」に出演、2005年には韓日中合作映画「墨攻」に古代中国の将軍役で出演する一方、制作にも協力するなど、アジア映画界の交流と質的発展にも貢献している。

 出演作が毎年のように日本で公開され、本紙でも何度かインタビューする機会があったが、穏やかな語り口、質問に一つ一つていねいに答える誠実な姿勢、映画に込めた思いがとても印象的で、「国民的俳優」と呼ばれるのも納得させられる人柄だった。

 現在日本で公開中の80年光州民主化運動をテーマにした「光州5・18(原題・華麗なる休暇)」では、戒厳軍の鎮圧に抗して市民軍を組織する元軍人を演じている。光州市民の良心と抵抗精神を代弁しており、まさに国民俳優・安聖基でなければ演じられない役といえよう。

 「韓日、そしてアジアの文化交流、映画交流を深めたい」という安聖基氏の、さらなる活躍を期待したい。(L)