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2010/04/02

<鳳仙花>◆アジアの頭脳スポーツ「囲碁」◆

 今年11月に中国・広州で開かれる第16回アジア競技大会で、囲碁が初めて正式種目に採用された。スポーツ競技に囲碁が加わるのは意外だが、世界では「頭脳スポーツ」として認識されつつある。今回の大会には、世界最強といわれる韓国の李世乭(イ・セドル)9段と李昌鍋(イ・チャンホ)9段、日本の史上最年少名人の井山裕太9段、中国の古力9段ら強豪が参加する見込みで囲碁ファンには大いに楽しみだろう。

 囲碁の歴史は古い。4000年以上前に中国で生まれ、その後、韓国や日本に伝わった。「国際囲碁連盟」(IGF)によると、囲碁は71カ国・地域で普及しており、愛好家の数は中国2500万人、韓国900万人、日本500万人。この3カ国で世界の9割強を占める。まさに、東アジアの「頭脳スポーツ」と言える。

 囲碁を発展させ、近代にプロ制度を確立したのは日本だ。木谷実や台湾出身の呉清源が現代に通じる戦法を確立し、戦後は坂田栄男、藤沢秀行、70~80年代は木谷門下を中心に隆盛を極めた。海外普及にも力を注ぎ、「GO」(碁)は国際語になっている。韓国からも趙治勲(チョ・チフン)、曹薫鉉(チョ・フニョン)らが学び、曹薫鉉は帰国後、李昌鍋ら俊英を育てている。

 時は流れ、90年代以降は韓国と中国の台頭が著しく、国際棋戦では日本を退け韓中が優勝するケースが多い。国際組織のIGFも82年の創設以来、日本が会長国を務めてきたが、来年5月から韓中を加えた3カ国の持ち回り体制となる。従来の日本主導から、3カ国の連携で国際化をめざす時代になったといえよう。

 囲碁は一見、石の取り合いや陣取りゲームに思われがちだが、その効能が見直されている。バランス感覚が磨かれ、精神力や忍耐力も養われるという。最近は学問的にも認知され、韓国の明知(ミョンジ)大学には囲碁学科が置かれ、日本の東大や慶大でも単位が取れる囲碁講座がある。45カ国が参加する今回のアジア大会を契機に、東アジアの伝統文化が世界に広まることを期待したい。(Y)