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2011/07/08

<鳳仙花>◆韓国のメセナ活動が生んだ快挙◆

 韓国の若い音楽家たちが世界3大コンクールのチャイコフスキーコンクールを席巻した。声楽部門で男女とも1位、同コンクールの華、ピアノ部門では2位と3位、さらにバイオリン部門で3位。世界的なコンクールで韓国籍の若者5人が揃って上位入賞したのはかつてないことだが、栄冠を手にした5人のうち4人は錦湖アシアナ文化財団の「錦湖英才プログラム」出身であり、韓国のメセナ(企業による芸術・文化支援)活動から生まれた快挙ともいえよう。

 同財団は、1990年に錦湖弦楽四重奏団を結成し、13年前からオーディションなどを通じて若手音楽家の卵を発掘して演奏の機会を与え、名器貸与、舞台マナーも指導する「錦湖英才プログラム」を実施している。優れた実力を持つ若手音楽家たちには、世界的なオーケストラとの協演の機会も提供。財団の年間予算60億ウォンのうち20億ウォンをこの英才支援事業に投じ、これまでに音楽英才1000人を発掘した。メセナ活動の模範である。

 こんな逸話がある。05年5月、同財団の故朴晟容理事長が癌で死去する直前、ルービンシュタインコンクールに出場する孫(ソン)ヨルムさんに「孫さん、コンクールの後、フランクフルトに寄ってスタンウェイを1つ選びなさい」と語った。約束した名器のプレゼントだ。ヨルムさんは、98年7月に錦湖英才コンサートに出場、才能を開花させ、今回のピアノ部門2位となった。同3位の高校生、趙成珍君もここから出発した。

 メセナという言葉は、古代ローマ皇帝アウグストゥスの片腕だったマエケナスが若い詩人や芸術家を手厚く保護したことに由来する。今日、ラテン文学最高の詩人ウェルギリウスの「アエネーイス」やホラティウスの「諷刺詩」を読めるのもそのおかげだ。

 韓国でも多くの企業が文化財団をつくるなどして、メセナ事業に取り組んでいるが、その歴史はまだ浅い。チャイコフスキーコンクールの成果をバネに各企業の芸術・文化支援活動がより一層活発になるよう期待したい。(S)