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2012/10/26

<鳳仙花>◆韓国、格差是正への道◆

 韓国で格差が深刻な問題になっている。「経済民主化」が大統領選挙の大きな争点になっているのも、国民の多くが現状に不満を抱いているからだ。経済が低成長時代に入り、分け合うパイが少なくなっているだけに、格差是正は待ったなしの状況にある。

 統計庁が数年前に韓国人の階層意識について行った調査によると、半数近くの45・43%の人が「自分は下流だ」と感じていることが分かった。また、「努力をすれば階層が上がる可能性が高いと思うか」という問いに6割近くが「そうは思わない」と答えている。

 英BBC放送と読売新聞が34カ国を対象に行った共同世論調査では、「国民の間に豊かさが十分に公平に行き渡っていると思うか」という問いに「公平でない」との回答が最も多かったのは韓国だった。韓国は日本同様に平等主義的な国民感情が強く、格差への拒否感はそれだけ大きい。

 KDIによると、中間層の比率は1997年の通貨危機以降、年平均1%ずつ低下しており、40%台に縮小したとの調査結果もある。中間層衰退の原因は、通貨危機後に新自由主義的な政策を急速に推し進めたことにある。その端的な例が、IMF(国際通貨基金)の融資条件でもあった「労働市場の柔軟化」の採用だ。その結果、労働法制などが改変されて、給与水準の低い非正規労働者が急増。それに伴い所得格差が拡大した。

 李明博大統領は08年の就任に際し、「深刻になった所得格差を必ず解消し、中間層を回復させる」と宣言した。だが、結果はさらに格差が拡大し、中間層は縮小している。

 かつて「1億総中流」といわれた日本も、富裕層と低所得層の両極化が加速し、中間層が縮小傾向にあり、社会にぎすぎす感があるのはそのせいだとも言われる。サッチャー政権時代の英国で犯罪が急増したように、中間層の崩壊は社会の安定を様々な形で毀損する危険性を内包している。韓国も教訓とすべきだろう。大統領選挙でも、中間層拡大のための政策で論議を戦わせてほしい。(S)