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2013/03/29

<鳳仙花>◆多文化社会への歩み促進を◆

 韓国で最近話題になったミュージカルに、『マイ・リトル・ヒーロー』がある。韓国人の父とフィリピン人の母を持つ少年が、朝鮮王朝舞台のミュージカルのオーディションに挑む物語で、多文化家庭に対するやさしさに包まれている。昨年、日本で上演され高い評価を得たミュージカル『パルレ』(洗濯の意)も、モンゴルからソウルに働きに来た青年が、賃金未払いや民族差別を受けながらも、韓国人女性と愛を育む物語だった。

 夢と希望の大切さが語られる一方で、両作品とも社会の根強い差別と偏見を描きだしているのが印象に残った。

 韓国が「多文化主義」を理念にした政策を本格的に取り入れたのは2006年のこと。2000年代から外国人労働者や韓国人と結婚した外国人が急増し、それに比例して差別事件や賃金不払いなどの事件が起き、外国人の人権保障に迫られたのだ。外国人処遇基本法や多文化家族支援法などを制定し、外国人の地方参政権や二重国籍も一部認めた。これは、少子高齢化で労働力が不足する韓国社会の「未来戦略」でもあった。

 韓国の多文化社会への取り組みはまだ始まって間もないが、多文化家庭が存在することへの理解が広まり、中でも子どもの人権への関心が広がったのは成果だろう。各地に設けられた多文化センターでは、韓国人と多文化家庭の子どもたちによる演劇や合唱団活動を通して、相互理解を深める取り組みも行われている。こうした作業が積み重ねられ、差別や偏見が徐々にでも解消することを望みたい。

 日本でも多文化社会への取り組みが進められているが、最近一部で、差別的デモなどの問題が起きている。欧米などは民族差別表現に厳しく、欧州リーグで活躍する日本のサッカー選手に差別的発言をしたサポーターが、スタジアムへの出入りを禁止された例もある。韓日とも差別事件には厳しく対処してもらいたい。そして両国で多文化社会に向けた経験を共有し、共同の取り組みなども試みてほしい。(L)