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2014/08/22

<鳳仙花>◆朝鮮通信使資料を世界記憶遺産に◆

 7年前の2007年、朝鮮通信使400周年を祝う行事が韓日各地で行われた。中でも静岡は、第1回朝鮮通信使が徳川家康と面会した場所であり、記念行事が盛大に行われた。通信使一行が宿泊した寺には、随行員が書いた見事な扁額や手紙が残されており、当時の華やかな交流を実感したことを覚えている。

 その「朝鮮通信使」の関連資料を、韓日共同でユネスコ世界記憶遺産への申請を目指す動きが本格化している。釜山文化財団などの韓国側推進委員会と、静岡市など全国の15自治体が加盟する連絡協議会(事務局・長崎県対馬市)が、共同で2016年申請、17年登録を目指している。

 先月末には釜山文化財団の関係者が静岡入りし、日本側と意見交換した。釜山市や長崎県も共同申請に前向きと聞く。自治体と市民団体が協力して困難を乗り越え、ぜひ共同申請を実現させてほしい。

 朝鮮通信使はもともと、室町幕府からの使者と国書に対する返礼として始まった。豊臣秀吉の朝鮮侵略で両国関係が断絶したが、1607年に江戸時代はじめての朝鮮通信使が実現し、これ以降12回に渡って派遣され、善隣友好の関係を築くのに大きな役割を果たしたのである。

 その精神を引き継ぐため、朝鮮通信使再現行列を長年行ってきた長崎県対馬市も今月上旬、2年ぶりに行事を再開した。行列は台風の影響で中止されたが、講堂で国書交換の再現式を行い友好を誓った。昨年は対馬市の寺から盗まれた仏像が韓国で見つかり、韓国側が返還を拒む問題が起きて行列が中止されていただけに、今回の復活は本当に喜ばしい。

 「通信使」は「信(よしみ)を交わす」の意とされる。来年は韓日国交正常化50周年を迎える。共同申請に取り組む中で両国市民が「信を交わす」ことを願いたい。そして世界記憶遺産となった通信使資料を相互に見学し、「善隣友好」の精神を共有する日を楽しみにしたい。(L)