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2021/09/10

<鳳仙花>◆「福祉美容」50年行う韓国女性◆

 高齢者福祉の一つに「福祉美容」がある。高齢者や身体が不自由な人の自宅、介護施設などを訪問して、美容を楽しんでもらうことで、きれいになるだけでなく、気持ちを明るくするなど、精神的にも良い影響を与える「化粧療法」である。

 韓国・済州道で美容院を営むムン・スネさん(78)は、その福祉美容を50年間行っている。20年以上訪問している人も多く、中には50年近く訪問している93歳の女性もいる。月に1回のムンさんの訪問を家族で楽しみにしてくれ、美容が長生きや認知症改善にもつながっているという。

 ムンさんは1961年、貧しい家庭を助けるため、高校を中退して美容師の道に進んだ。10年以上の下積みを経て、73年に済州市内に美容室を開いた。「福祉美容」は開業とほぼ同時期の72年に始めた。

 「美容協会からボランティア活動の提案があった。人の役に立てるならと思い引き受けた」と話す。しかし、精神療養患者を対象とした整髪は容易ではなく、一緒に奉仕を行った会員は次々とやめていったという。

 ムンさんは「確かに大変だったが、(私自身も苦労してきたので)美容技術を学んだことが誰かに助けを与えることに役立つならと思った」と振り返る。

 ムンさんは、89年からは道内の保育園と老人ホームを慰問し、ひとり親家庭の援助も行っている。地方自治体の援助だけでは困難な人たちのことを知り、物心両面で分かち合いを実践したのだ。老人ホームなどに渡した慰問品は、これまで総額1億㌆を超えるまでになった。

 ボランティア活動に取り組んで50年経ったが、ムンさんは「高齢者や被介護者に美容を施す時が一番の幸せだ。私も年を取ったが、体が続くまで取り組みたい」と話す。


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