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2009/12/18

<Korea Watch>本紙が選ぶ・10大ニュース、2009年の韓半島を振り返る

  • ①韓国経済、世界最強のV字回復

    総合株価指数は一時1000割れ寸前まで下落したが、1600台まで回復した

  • ②「グリーン成長」戦略打ち出す

    大統領直属のグリーン成長委員会は107兆ウォンを投入するグリーン成長5カ年計画を確定した

  • ③EU、インドなどとFTA妥結

    FTA(自由貿易協定)交渉の妥結を宣言した李明博大統領㊧とEU議長のラインフェルト・スウェーデン首相

  • ④サムスン、現代自が世界で急伸

    サムスン電子の40周年記念式典

  • ⑤韓日中が東アジア共同体を推進

    10月の韓日中首脳会談。左から李明博大統領、温家宝首相、鳩山由紀夫首相

◆ 1、宇韓国経済、世界最強のV字回復 ◆

 世界経済は昨秋のリーマンショックで「100年に1度の危機」といわれる大打撃を被った。不況の波は韓国にも押し寄せ、輸出減少、成長率急降下という事態に見舞われた。しかし、先進国の中でも逸早くV字回復した。

 政府の対策は素早かった。年初に、世界経済危機に対処すべく李明博大統領を議長とする「非常経済対策会議」の下に「非常経済状況室」を設置する臨戦態勢で望んだ。財政支出を増大、金利を引き下げるなど経済の落ち込みに歯止めをかける政策を展開した。このような果敢な対策を講じることで、回復の足場を築いた。

 いうまでもなく、貿易依存の高い韓国経済にとって、世界経済の委縮は直接的な打撃を受ける。輸出1月に過去最大の下げ幅となる前年同月比32%減を記録、その後もマイナスが続いたが、次第に下げ幅が小さくなり、11月にはプラスに転じた。輸出の世界ランクは、今年は英国などを抜いて、初めてベスト10入りの9位につけている。他の先進諸国と比べ、韓国の輸出回復力の強さを示すものだ。

 GDP(国内総生産)成長率は第3四半期(7~9月)に前期比3・2%、前年同期比でも今年初の0・9%のプラス成長を記録し、OECD(経済開発協力機構)加盟30か国中、最も早い回復と評価された。

 企業も回復の勢いをみせた。12月決算上場企業570社の第3四半期業績は、』売上高は前年同期比2・89%とマイナス幅を縮め、営業利益は32・55%増の大幅回復を実現した。株価も急速な回復をみせ、総合株価指数は一時1000割れ寸前(3月2日)までいったが、1600台に回復した。急激なウォンや安に見舞われた為替レートも1㌦=1100㌦台で推移している。


◆ 2、「グリーン成長」戦略打ち出す ◆

 今年の韓国の経済政策の最大の特徴は、一連の環境重視の「グリーン成長」戦略を打ち出した点だ。李大統領は年初に4大河川整備など36の事業に4年間で50兆ウォンを投入して96万人の雇用を創出するとした「グリーン・ニューディール事業推進案」を発表した。また、未来の韓国産業をリードする新・再生エネルギー、放送通信融合、ロボットなど17の新成長エンジンを発表した。

 7月には大統領直属のグリーン成長委員会が「グリーン成長5カ年計画」を確定した。計画によると、2020年までにグリーン技術・産業、気候変動適応力、エネルギー自立度、福祉など環境にやさしいグリーン競争力の総合で世界7大国入りをめざし総額107兆ウォンを投入する。「グリーン成長の道は避けることができない道だ」(李大統領)との位置づけで、国家的に展開する計画だ。

 また、CO2など温室効果ガスを2020年までに05年比で4%削減するとの計画を確定した。削減義務を負っていない国の中で総量削減目標を示したのは韓国が初めてで、これは「グリーン成長」を国家戦略に位置付けたことに沿うものだ。

 政府のこのような環境重視型成長戦略は、産業界にも波及しており、サムスン電子は先陣を切って7月に「グリーン経営宣布式」を行い、同社が排出する温室効果ガスを現在の半分に減らすことを決議した。

 
◆ 3、EU、インドなどとFTA妥結 ◆

 今年は世界各国とのFTA(自由貿易協定)交渉が進展した。

 特に、世界最大の経済圏であるEU(欧州連合)との交渉が妥結、10月に仮署名、来年2月の正式署名を経え、7月発効をめざすことになった。5年内に関税を全廃がすることにしており、自動車や電子製品で観光製品の対EU輸出の増大が期待される。

 インドとは8月に包括的経済連携協定に正式署名した。10年以内に関税を85~93%引き下げるもので、来年1月発効をめざしている。

 また、南米諸国との間ではペルーに続いてコロンビアとも交渉を開始することが決まった。5年間に初めて発効したチリとのFTAが大きな成果をあげており、波及効果が大きい。

 このほかに、サウジアラビアなど湾岸協力会議(GCC)との交渉が進められ、オーストラリア、ニュージーランドとのFTA交渉開始に合意した。

 さらにベトナムとは交渉開始に向けて作業チーム設置に合意した。

 一方、協定は締結したが、米側の批准遅れでは発効していない米国とのFTAは今年も宙ぶらりんのままとなった。11月の韓米首脳会談で、FTA進展のために努力することに合意をみたが、具体的なスケジュールにまでは踏み込めていない。

 また、懸案の日本とのFTAも本交渉にまで入れず、課題として残った。


◆ 4、サムスン、現代自が世界で急伸 ◆

 世界経済が不況にあえぎ、有力企業が苦戦するなか、サムスン電子と現代自動車が世界市場で大きくシェアを伸ばした。

 サムスン電子の今年第四半期(7~9月)連結業績は、売上高が前年同期比19%増の35兆8700億ウォン、営業利益が同186%増の4兆2300億ウォンと、いずれも4半期ベースで過去最高を更新。今年の予想売上高は130ウォンで、営業利益10兆ウォン突破も確実だ。

 直近2年間に業績が低迷した半導体部門が復活したほか、液晶パネルとテレビが世界1位、携帯電話が世界2位となり、名実ともに総合電子メーカーに成長した。

 11月には創立40周年を迎え、2020年までに連結売上高を今年の4倍の4000億㌦に増やし、全産業を含む世界企業のトップ10大入りを目指すという「ビジョン2020」を宣言。主力4事業のほか、バイオ、環境、エネルギー、太陽電池、ヘルスケアなど新・再生エネルギー分野を育成する。

 一方、現代自動車は日米欧メーカーの販売減少を横目に主力の北米市場のほか、経済成長が進む新興国市場などで販売を拡大した。米国で失業者を対象にした補償金制度などの販売奨励策が奏功したほか、欧州市場の小型車販売増、中国とインドでの自動車需要増、さらに低燃費車ラインナップの充実などにより販売台数を伸ばした。

 今年の年間販売台数は現代・起亜グループ全体で465万台に達する見込み。昨年は米フォードに続き世界6位(418万台)だったが、今年は5位に入る見込み。営業利益も第3四半期(7~9月)に9003億ウォンとなり、日産自動車や独ダイムラー、米フォードを上回り、世界の自動車工業界で初めてトップに立った。


◆ 5、韓日中が東アジア共同体を推進 ◆

 李明博大統領と鳩山由紀夫首相、温家宝首相の3首脳は、10月10日北京で韓日中首脳会談を行った。3首脳は鳩山総理が掲げる「東アジア共同体」構想について率直な意見交換を行い、「東アジア共同体」構想の具体化への協力を確認、これを長期目標とすることに合意した。また、3首脳は今回の会談で韓日中FTAの必要性に原則的な共感を示した。これを受け、韓国、日本、中国の3カ国政府は、早期に産・学・官の共同研究に着手することになった。

 韓日中FTAについてはこれまでも議論されてきたが、中国が積極的な半面、韓国は留保的、日本は慎重だった。このため、具体的進展がみられなかったが、今回の首脳会談を契機に、政府間交渉へ向け前進することになった。

 3カ国首脳はまた、「韓日中首脳会談10周年記念共同声明」を採択、「包括的協力パートナーシップの関係を構築することで相互信頼を高めた」と過去10年を評価し、「今後3カ国の協力を戦略的観点から実行し、協力をより高い段階に発展させる」ことを誓い合った。