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2012/08/31

<Korea Watch>サムスン研究 第13回 リーダー養成プログラム                                                  日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第13回 リーダー養成プログラム

◆国際競争力確保に向けグローバル人材育成◆

 企業がグローバル経営を推進し、国際競争力を確保するためには、何よりもグローバル感覚と能力を整えた人材が必要である。サムスングループでグローバル人材の育成を担当しているのが、サムスン人力開発院とサムスン経済研究所である。

 次世代を担うリーダーを育成するために、サムスングループでは先進的な経営手法を学ぶSLP(Samsung business leader program/リーダー養成プログラム)が設けられている。このプログラムは、グループ各社から選抜された部長クラスを対象として、5カ月間、延べ380時間のオフライン(40%)、オンライン教育(60%)を受ける役員候補者養成課程と、1995年から毎年優秀な人材を対象に、海外名門ビジネススクールと韓国内の主要経営大学院に2年間派遣し、経営実務とグローバル経営を学習できる機会を提供するMBA(経営学修士)制度の2つから構成されている。

 次世代リーダー養成のためのMBA制度は、いわゆる文系の修士課程が経営管理、金融、コンサルティング分野だけでなく、21世紀の変化した企業環境に対処できるようにするために、工学、コンピュータ、経営学の複合的知識と能力を備えることに焦点を当てている。

 89年社内技術大学で発足したサムスン電子工科大学校(SSIT)は、2001年から成均館大学校と人材育成産学協同協約を結び、社内大学としては韓国初の正規大学として承認された。定員40人で、12年は、博士3人、修士31人および学士32人を含む合計66人が卒業し、正規大学として承認後の02年から現在までに563人の卒業生を輩出している。SSITに入学するには、サムスン電子で勤務態度などが模範的で卓越した業務評価の社員であることが前提条件である。最終選考は、基礎的な修学能力を向上させるために、約3カ月間の予備学校で試される。そこで合格してはじめてSSITに入学できる。

 SSITは社員各自の成長と能力向上を目途としているだけでなく、戦略的かつ体系的な教育課程を通じて、会社の未来を背負う技術者を継続的に養成する役割を担っている。

 学士課程は、半導体工学またはディスプレー工学、修士・博士課程は、デジタルシステム、メモリーデザイン、プロセスデベロップメント、アクティブマトリックス型液晶ディスプレー(AMLCD)、ソフトウエアの5つの学科で構成されている。

 学士は年間休み無しで、1年3学期制の3年間教育である。一般大学の4年間のカリキュラムより1年短く運営されている。学士の場合、レポート提出は週2回で、1年に合計6回の中間および期末試験を受ける。1学年課程は学業に専念することができるように、現場での勤務はなく全日制教育がとられ、2学年課程からは部署に復帰して業務と学業の両立が求められる。

 修士と博士課程は、実務中心のカリキュラム構成と現場のインフラを活用したプロジェクトを通して、理論と実務を兼ね備えた思考型の人材育成が目標となっている。修士課程は、特に半導体とディスプレー産業の現場感覚を持つ社内の博士レベルの研究者が教授陣として参加し、共同研究と論文の指導を行う内容である。

 博士課程は3年6カ月間で、初めの2年間はコースワーク期間、残り1年6カ月は現業をこなしながら論文研究をしなければならない。教授と研究テーマに対して約3時間の議論をし、これを自ら深化させるのに7~10時間費やす必要があり、1日3~4時間の正規の就業時間まで含めれば、1日24時間あっても足りないほどである。

 MBA制度で海外派遣された者のほか、サムスングループによる韓国内の大学と共同の修士・博士課程プログラムを履修した者を含めると、サムスングループ30数万人の役職員のうち約20%が博士か修士の資格を持っている。ただし問題がないわけではなく、約20%の修士・博士の資格保有者が、サムスングループの中核となる人材に成長しているとは限らないジレンマを抱えている。