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2012/07/20

<Korea Watch>サムスン研究 第8回 深化する外国企業との連携                                                 日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第8回 深化する外国企業との連携

◆深まる水面下での相互依存関係◆

 サムスン電子は、韓国内の協力企業育成とともに、外国企業とのダイナミックな連携に力を入れている。

 最近の日本企業との連携で目を引くのは、サムスンが5大有望事業に挙げているOLEDと医療機器の分野においてである。昨年8月のサムスンモバイルディスプレイ(SMD)と保土谷化学工業がOLED(有機EL)の材料部門で業務提携を結び、共同開発に乗り出す計画である。医療機器分野では2012年3月、戸田建設が建てる病院にサムスン電子の除菌技術を適用したSPi(S-Plasma ion)機器を設置する協約を締結している。サムスン電子と戸田建設は、病院・老人施設のほか、住宅、公共施設、学校、店舗などにもSPi機器を導入したい考えである。

 12年4月、日本企業との連携で注目されながら失敗に終わったのは、サムスン電子とNTTドコモ、富士通、富士通セミコンダクター、日本電気、パナソニックモバイルコミュニケーションズによる合弁会社の設立であった。この分野では米国クアルコムが携帯電話の通信用半導体では世界シェアが約40%に達し、スマートフォンでは80%前後の寡占状態にある。欧米企業をみると、サムスン電子のオープンイノベーションを象徴しているのが、グーグルやアップルとの連携である(図表)。特にアップルとは、特許訴訟中であるものの、サムスン電子からの部品・素材の供給が拡大しており、水面下での相互依存関係は深まっているのが現実だ。

 11年10月、サムスン電子・李在鎔社長が、アップルの創業者スティーブ・ジョブスの追悼式に招かれたとき、アップルの最高経営責任者(CEO)ティム・クック氏との間で、アップルへの部品供給を継続する約束を取り付けたと報じられている。

 12年3月、アップルのニューアイパッドパネルには、アイパッド2よりも高い解析度が求められたため、ライバル企業を押しのけ、サムスン電子が単独で供給することになった。

 これまでもサムスン電子は、ニューアイパッドにNANDフラッシュ、DRAMを含むメモリー半導体、アプリケーションプロセッサ(AP)、液晶表示装置などを主力で供給しており、今回単独でパネルを供給することになったことで、アップルとの部品・素材の協力関係は深化している。サムスン電子からアップルに提供された部品・素材は、11年に78億㌦に達し、今年は契約金額で97億㌦、最大では110億㌦にのぼるとみられている。

 だが完成品である携帯電話とスマートフォンの世界市場、とりわけ中国市場では、サムスン電子とアップルは熾烈な競争を繰り広げている。アップルは、中国で第3位の携帯電話キャリア中国聯合通信(チャイナユニコム)にアイフォーンを独占供給し、最近第2位の通信事業者中国電信(チャイナテレコム)とも契約を締結し、中国攻略を本格化している。12年3月には、アップルCEOティム・クック氏は中国を訪問し、そのとき最も関心を集めたのは中国移動通信との接触である。中国移動通信は、中国移動通信市場の60%以上を占める寡占事業者である。中国移動通信との連携が具体化すれば、中国市場での巻き返しのキッカケになる。

 世界スマートフォン市場の盟主であるアップルは、11年第4四半期に中国での売上が45億㌦で、中国スマートフォン市場のシェアではわずか7・5%の5位に終わった。1位のサムスン電子のシェア24・3%とは大きく水を開けられた格好だ。一方のサムスン電子は、09年5月に中国で3Gサービスが開始されると、中国の3大モバイル通信会社の標準に合わせたスマートフォンを開発し、併せて3社と販売提携を交わしていた。アップルより約3年早く中国のスマートフォン市場に参入したことが功を奏したといえる。

 グーグルとアップルは基本ソフト(OS)で対立関係にある。サムスン電子は、グーグルのアンドロイド陣営に属しており、11年11月、グーグルのエリック・シュミット会長がサムスン電子を訪問したとき、アップルとの特許訴訟ではサムスン電子をサポートすると表明し、アップル側を牽制している。