◆多様なスポーツマーケティングと社会貢献活動を実施◆
ユーロ圏の財政危機で先進国市場に陰りが見え始め、中国市場までもその影響が波及して弱含みに転じる中、アフリカ市場はこうしたグローバル金融危機にもそれほど影響を受けていないことから、市場として大いに注目されている。欧州危機にもかかわらず、サハラ以南アフリカ地域の国内総生産(GDP)成長率は世界平均を上回っている。
サムスン電子は、2009年12月の組織改編時に中阿総括を中東とアフリカに分離し、アフリカ総括を南アフリカ共和国に新設した。現在、南アフリカ共和国に1箇所の総括と南アフリカ共和国、ナイジェリア連邦共和国、ケニア共和国に3つの法人、そしてガーナ共和国、セネガル共和国、スーダン共和国、モーリシャス共和国に4つの事業拠点を置き、アフリカ市場を「ラストエマージングマーケット」と位置づけた戦略を強化している。なお、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプトなどサハラ砂漠より北側は中東総括の管轄下にある。
崔志成サムスン電子副会長が、11年3月にアフリカを訪問したとき、「今からアフリカに橋頭堡を確保してサムスンの青い旗が翻るようにしなければならない」と強調した。現在サムスン電子は、アフリカで毎年売上げを2倍以上伸ばすという「アフリカ2・0戦略」を標榜している。この2・0戦略を通じて、昨年12億㌦であったアフリカの売上げを15年に100億㌦まで増やす計画である。100億㌦という規模は、サムスン電子が11年中国のセット(完成品)市場であげた売上げにほぼ匹敵する。サムスン電子は、「Built For Africa(アフリカのために作る)」製品を継続的に売り出し、プレミアム ブランドとしての地位を確立する戦略である。
アフリカのサムスン電子職員は09年に250人余りであったが、11年に980人まで増えている。サムスン電子は15年までにアフリカに30箇所の営業拠点を確保するため、現地人の採用を拡大する方針である。アフリカのサムスン電子職員を980人から15年までに5000人に増やす計画である。なおアフリカ駐在を希望するサムスンマンには、家族を欧州に住まわせるなどの配慮も怠らない。
アフリカでも2位との差を広げる超格差戦略に貢献しているのが現地化製品である。多様な食物の収納が可能にした両開き型冷蔵庫、茹でて洗濯を好むアフリカ消費者のために茹でた洗濯と似た効果を出すバブル技術のドラム式洗濯機、SIMカード(契約者情報を記録したICカード)を2つまで入れられる携帯電話、サビにくく不安定な電圧下でも機能するエアコンやテレビなど現地化製品を次々と送り出している。この結果テレビ部門では、アフリカ地域内のサムスン電子のシェアは40%を越すまでに上昇している(図表)。
サムスン電子の急成長は、アフリカ市場においても製品の品質、ブランド、アフターサービスに支えられている。サムスン電子は、アフリカで愛されるブランドとして持続的に展開するために、スポーツマーケティングとアフリカの社会問題解決に手助けになる多様な社会貢献活動を実施している。
スポーツマーケティングではイングランドプレミアリーグのチェルシーで活躍していたドログバ選手(アフリカではサッカーの神様、12年6月から中国の上海申花FCに移籍)を活用して認知度を引き上げてきた。サムスン電子は08年からネーションズカップサッカー大会を後援しており、13年南アフリカ共和国、15年モロッコ大会までマーケティングを継続し、また次世代サッカー選手たちのために、13年アフリカU20チャンピオンシップ(アルジェリア)、15アフリカU20チャンピオンシップ(セネガル)も後援する。
昨年の社会貢献活動の例では、公開公募2100人の中から選抜されたサムスンの役職員150人が、11年7~8月にかけてスーダン、ザンビア、ガーナ、エチオピア、コンゴなど5カ国で夏期休暇の期間に奉仕活動を行った。サムスン電子としては、エンジニアリング アカデミーと太陽光インターネット スクールなどサムスンの先端IT技術を活用した教育により、15年までに500万人のアフリカ人が教育を受けられるようにする計画である。