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2013/01/25

<Korea Watch>サムスン研究 第32回 泥沼化するアップルとの特許紛争①                                                 日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第32回 泥沼化するアップルとの特許紛争①
  • サムスン研究 第32回 泥沼化するアップルとの特許紛争②

◆スマホ覇権めぐる両社の争いが第2段階に突入◆

 アップルによるモバイル関連のグローバル特許紛争は、2010年3月に台湾メーカーのHTC(宏達国際電子股份有限公司)を相手に訴訟を起したときに始まる。11年4月に提起されたアップルによるサムスン電子に対する特許訴訟は、10カ国50数件に及ぶ。

 最近サムスンだけでなく、LG、ハイニックスなど韓国電子メーカーは、相次ぐ特許訴訟と反ダンピング提訴などに翻弄されている。とくに米国による特許紛争は、訴訟を提起してからライセンス交渉を行う、パテントトロール(NPE)のパターンが激増している(図表①)。

 過去には特許紛争が起きれば、クロスライセンスを締結するか、ロイヤルティーを支払うことで合意するのが一般的だった。

 最近では販売遅延や禁止など、ビジネス自体にダメージを与える目的の訴訟が大部分である。

 12年8月、米カリフォルニア北部地方裁判所陪審員団は、計7件の項目中、使用者環境(UI・ユーザーインターフェース)3件とデザイン3件の合計6項目の特許についてアップルの主張を認めた。

 6項目の中で操作方法に関する特許は、スクロール(Scrolling)で下や上に上げた時のはねる技術、画面を2本の指で拡大・縮小する技術、2回たたけば拡大し再び戻る機能などである。

 デザインでは、隅が丸い長方形の形体、長方形に囲んだ枠(bezel)、前面に長方形の形・画面、画面上部分に左右で長いスピーカー穴、などがアイフォーンの特徴とみなされた(図表②)。陪審員団が評決した金額は、1兆2000億ウォン(10億4934万㌦)に達する。

 技術に関する特許は、周辺技術とソフトウエア開発に成功すれば、代替可能性を見出せるであろうが、問題はデザイン特許である。デザイン特許は対応するのが容易ではない。

 丸い角を採用したデザインは、多くのスマートフォン(高機能携帯電話)が採用しており、完全に新しい形体に作り直すのは難しいであろう。アイコン配列のデザインも、アンドロイド携帯の大部分が採用したデザインで、これを使わないことも至難の業である。

 中長期的にアップルのデザイン特許訴訟を回避する方法は、サムスンの独創的なデザイン開発だけである。アップルがギャラクシーS3とギャラクシーノート10・1など、サムスン電子の最新主力製品に対しても追加訴訟に踏み切る動きであり、さらに、グーグルの基本ソフト(OS)アンドロイドを使うメーカー全体にまで訴訟を拡大していくならば、問題はかなり深刻化する。

 サムスン電子としては、グーグルのアンドロイド一辺倒からリスクを減らすために、マイクロソフト(MS)のOSウィンドフォンを搭載した新製品を発売したが、切り札というにはほど遠いのが実情である。

 訴訟と並行してアップルは、サムスン製のNANDフラッシュやモバイルDRAMなどをアイフォーン5から徹底的に排除しており、特許紛争が部品にまで飛び火したことは、スマートフォンの覇権をめぐる両社の争いが、第2段階に突入したことを物語っている。