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2013/02/01

<Korea Watch>サムスン研究 第33回 泥沼化するアップルとの特許紛争②                                                 日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第33回 泥沼化するアップルとの特許紛争②-1
  • サムスン研究 第33回 泥沼化するアップルとの特許紛争②-2

◆国際的優位の通信特許を武器に反撃◆

 アップルは8月にカリフォルニア陪審員団が評決した金額1兆2000億ウォン(10億4934万ドル)に加えて、サムスン電子に特許侵害の追加賠償7900億ウォン(7億700万㌦)を請求した。これらに対してサムスン電子は、賠償金額の大幅削減と再審を請求した。12月6日に最終判決を迎える。

 サムスン電子の技術使用料は、2012年6月末に2兆1091億ウォンに達している。07年以降、1兆ウォン前後の水準で推移してきたが、ここ1、2年急増している。仮に米国地方裁判所の評決が12月に確定し、アップルに対して1兆2000億ウォン以上賠償することになれば、サムスン電子の技術使用料は3兆ウォンを軽く越えることになる(図表①)。これは年間売上高の約2%に達する水準である。

 図表②のように、世界的な広がりを見せている今回の特許紛争は、アップルがデザインや独創的な技術を前面に出して攻撃しているのに対し、サムスン電子は国際的に優位にある通信特許を武器として反撃する構図となっている。

 サムスン電子の反撃カードは、4世代移動通信技術である高速無線通信技術LTEである。サムスン電子の保有するLTE特許件数は世界のトップであり、直接的な特許紛争はもちろん、使用料の交渉などでもサムスン電子側に有利に働く。

 12年10月に入って、サムスン電子のアップルに対する特許訴訟は、最新スマートフォン・アイフォーン5にまで拡大している。サムスン電子のLTEなど特許6件を、アイフォーン5が侵害しているとカリフォルニア北部地方裁判所に提訴した。

 こうした一連の特許訴訟は、まさに両社とも消耗戦の様相を呈しつつあるが、これがどのような意味を持つのか疑問の声も聞かれる。

 角が丸いデザインをアイフォーン固有デザインと規定すると、アップルが独占するにはあまりに広範囲な概念が含まれる。日常生活で自動車や家電を見渡したとき、完全に独創的なデザインというものが、世の中に存在するのであろうか。また、きわめて専門知識の必要な特許問題に、素人の陪審員団に判断を任せる米国の司法システムそのものにも、疑問の目が向けられている。今回、陪審員団長がアップルとの利害関係者との指摘も浮上しており、公平性に欠けるとの批判も浮上している。

 特許紛争を通じて累増していく技術使用料は、最終的に製品価格へ転嫁されていくと仮定すると、泥沼化する特許紛争の結末は、消費者の負担という形で跳ね返ってくる。両社が支払っている技術使用料を合算したとき、両社の研究開発費を上回っているかも知れない、あるいは中国を中心としたコピー製品による実害の方が、はるかに大きな金額に達している可能性もある。コピー製品が完全に排除され、両社が研究開発した次世代製品の中から、消費者が価格と機能性・デザイン等を判断して、自由に選択できるのが望ましい競争関係である。両社の特許を巡る応酬が拡大・泥沼化している現在、沈静化への道筋は全く見えないのが現状である。