ここから本文です

2013/04/05

<Korea Watch>サムスン研究 第41回 サムスンの未来図②                                                 日韓産業技術協力財団 石田 賢 氏

  • サムスン研究 第41回 サムスンの未来図②-1
  • サムスン研究 第41回 サムスンの未来図②-2

◆加速する世代交代、求められるリーダーシップ◆

 1987年12月1日、サムスングループの社旗を譲り受けた李健熙会長は、2012年12月1日で就任25周年、13年6月には新経営を打ち出してから20周年を迎える。93年の新経営宣言と共にサムスンの第2創業を成功に導き、サムスンの売上高10兆ウォンから384兆ウォンと実に39倍の規模に育てた功績は大きい(図表①)。

 李会長は半導体、携帯電話などの新事業の旗振り役にとどまらず、地域専門家制、デザイン経営、オリンピック公式スポンサーへの参加など、サムスンの根本的な方向を転換する決断を通じて成功を収めてきた。李会長の洞察力と経営能力を求められる後継者は、新規事業を創造・発展させるとともに、サムスングループ35万人、関連企業の家族までを含めれば500万人といわれる大集団を成功に導かなければならない。さらに韓国の格差社会に耳を傾け、経済民主化などの流れに沿った財閥へと変貌していく必要にも迫られている。

 12年12月の定例の役員昇格人事で、李会長の長男・李在鎔サムスン電子社長が副会長へ昇進した。その理由は、グローバル競争企業が深刻な経営難を体験する中、最前線でサムスン電子の経営全般を支援し、スマートフォン・テレビ・半導体・ディスプレー事業など世界第1位を強固にし、創立以来最大の成果を上げるのに寄与した、という評価である。

 李健熙会長(2代目)と李在鎔副会長(3代目)を比較してみると(図表②)、李会長は、37歳でサムスン・グループの副会長に就任し、8年間初代のもとで訓練を受けた後に45歳で会長に就任した。李在鎔副会長が8年かけて会長になると仮定すると52歳、李会長が45歳で会長に就任したときよりも7年遅い。また李会長が新経営宣言を打ち上げたのは93年の51歳のときであったことと比較すると、李在鎔副会長が、誰もが認めるようなサムスン・グループのリーダーとして実績をアピールするには、残された時間は少ない。李在鎔副会長(3代目)は現在44歳、サムスン電子の実質的な経営は12年6月までは崔志成副会長(現在、未来戦略室室長)、6月以降は権五鉉副会長に委ねられてきた。今回の昇格人事で未来戦略室戦略1チーム長の李相勲社長が、サムスン電子の参謀役である全社経営支援室長に抜擢されたことで、李在鎔副会長の側近で脇を固める人事であることは明らかである。今後李在鎔副会長の経営手腕は、これまでのグループを経営支援する立場から、表舞台での実績で試されることになり、世代交代は一気に加速しよう。

 李在鎔副会長が数年後、グループ会長に就任することは間違いないが、企業の生存競争が厳しさを増す状況下、会長になるまでには、世界に独創性を主張する製品づくりと韓国の知識産業を主導するリーダーシップが求められている。同時にサムスングループの経営全般の支援から踏み込み、専門経営者のさらなる育成と10年前には少数であった女性や外国人をどこまでバランスよく組織の中枢に取り込めるかである。女性や外国人の比重は着実に増加する。25年前より比較にならないほどグローバル化し、加速する技術・製品開発、複雑化する経営組織、どれを取ってもサムスン財閥の後継者は、多様な人材を適切に活用しなければならない。

 李会長のカリスマ性と実力で引っ張っていく経営スタイルから、李在鎔副会長は、幅広く人材活用するために、成果主義一辺倒ではない系列企業間、部署間のバランスを重視し、個性を尊重する企業文化の醸成を迫られることになろう。