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2015/07/31

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第17回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第17回

◆「ポストチャイナ」はベトナム◆

 サムスン電子の携帯電話の生産拠点は、韓国内の他、海外ではベトナム、中国、インド、ブラジル、インドネシアなど5カ所を含む計6カ所である。中でもベトナムの生産基地は最重要拠点である。ベトナムは1980年代後半に「ドイモイ政策」といわれる経済開放と民主化政策へと転換し、92年12月、韓国とベトナムの修交を契機として、90年代半ばから韓国企業のベトナム進出が本格化していった(図表①)。当初サムスン電子は、カラーテレビ、VCR、モニター、オーディオなどの家電製品を生産し、ベトナム市場とともに中東やアフリカなどへの輸出拠点として位置づけていた。

 ベトナムが生産拠点としての性格が大きく変化したのは、2008年10月にサムスン電子はベトナムで1億台規模の携帯電話工場建設を発表し、その1年後にはベトナム・ハノイに携帯電話工場を竣工したことに始まる。中国の人件費が上昇し生産コストが上がってきたことと、中国での生産は合弁の運営形態であるため、自主的な動きが取りにくいとの判断も加わり、ベトナム拠点の構築へと大きく舵を切っていった。ちなみに15年の中国の最低賃金は月280㌦であるのに対し、ベトナムは月145㌦に過ぎず、約半分である。

 ベトナムの地理的な優位性は、ASEAN(6億人)、中国(13億人)、インド(12億人)のハブに位置していることと、中東、アフリカ、欧州に至るまで輸出拠点としての機能も併せ持てることにある。13年3月には、20億㌦を投じて携帯電話第2工場の建設に着手した。ここにサムスン電子は、ベトナムをスマートフォン世界最大の生産基地にするという戦略が明瞭となった。今年に入り30億㌦の追加投資を決定し、年末までにベトナムでの携帯電話生産能力を最大2億7000万台まで増やすことで、サムスン電子が世界で生産する携帯電話の半分以上は「メイド・イン・ベトナム」ということになる。

 サムスン電子の狙いは、ベトナムをグローバル輸出拠点として位置づけただけではない。東南アジア全体を視野に入れた研究開発拠点としての役割も浮かび上がっている。12年にハノイに大規模R&Dセンターを建設することを決定し、15年までに修・博士学位IT専門人材2000人規模のR&Dセンター設立を推し進めている。R&Dセンターはスマートフォン用のソフトウエア開発拠点としての役割も備える。


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