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2015/12/18

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第22回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第22回

◆電気自動車も中国頼みのサムスングループ◆

 最近のサムスングループの事業再編の動きから、5年後の主力事業は、情報通信技術(ICT)、電気自動車、バイオ、金融など4分野に集約される見通しである。バイオについては第20回で触れたので、本稿ではモノのインターネット(IoT)の象徴といわれる電気自動車に注目したい。現在サムスン電子が直面しているのは、半導体以外のほとんどの事業で収益性が落ちる中、新しい成長事業が早急に求められている。

 サムスンは1995年に自動車事業に進出したが、97年のIMF金融危機により、2000年フランス・ルノーに自動車事業を売却した苦い経験を持つ。それから15年を経た今日、自動車を巡る事業環境は激変している。

 電気自動車に対しては、韓国内ではサムスン電子だけではなく、LGグループ、SKグループなどが食指を伸ばしている(図表①)。LG化学は15年10月、中国南京に年産5万台規模のバッテリー工場を竣工し、サムスンSDIも同月、中国西安に4万台規模のバッテリー工場を稼動し、SKイノベーションも中国市場向けにハイブリッドバス用バッテリーを供給している。

 海外でもアップルが19年の発売を目標に無人走行電気自動車「アップルカー」の開発準備をしており、グーグルも無人走行電気自動車の開発を宣言し、公道での試験走行を始めている。電気自動車にあらゆる業種が進出に関心を持つ理由のひとつは、ガソリンエンジン車では10万点の部品を必要とするが、電気自動車になると部品の塊であるエンジン部分が不用となり、部品点数が大幅に減るからである。部品点数の数え方はモジュール化の度合いによるが、従来の部品数より100~300分の1になる。

 ガソリンエンジンに代わるバッテリー、電気モーター、車載用半導体などのコア部品を先行開発した企業が、電気自動車の主導権を握る。特にバッテリーは、電気自動車の性能と価格を決定する最も重要な部品である。

 電気自動車を戦略的に推進しているサムスンの中心組織は、14年12月に米国内の研究チームを統合したサムスン・リサーチ・アメリカ(SRA)である。シリコンバレーにあるこの組織は、研究開発とともにこの地域に集積しているスマートカー研究センター17カ所と緊密な連携を取り、開発動向の情報収集と分析に余念がない。


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