ここから本文です

2018/02/23

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第48回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第48回

◆生活家電の切り札と期待されるBtoB事業◆

 サムスン電子がBtoB(企業間取り引き)市場に本腰を入れ始めたのは、今から4年ほど前である。当時李在鎔副会長は、BtoB事業で高い収益を上げているIBMに注目し、この領域を開拓するために組織を再編するなど事業強化を図ってきた。昨年末のグローバル戦略会議において、今後の重要な事業戦略として、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、電装事業と並んでBtoB事業の重要性が再確認された。同会議において、サムスン電子が持続的に成長するためには、BtoB競争力の強化は必須という認識が、役員レベルで共有されたのである。

 こうした背景には、全社利益の約7割を半導体に依存している現状から脱皮する必要が迫られている中で、世界的に携帯電話の成長鈍化、テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの家電市場の停滞が追い打ちをかけ、しかも携帯電話や生活家電市場で中国企業の中低価格攻勢に晒される状況などが挙げられる。消費者家電部門の再生という視点にとどまらず、サムスン電子全体にとって、現在の難局を突破する意味で、BtoB戦略は優先的に位置づけられた。

 BtoB事業は成長性が期待されるが、短期的な収支に即効性のある市場ではない。BtoC(企業と個人消費者間の取り引き)のように継続的な需要が発生するのではなく、BtoB市場は変動幅が大きい。これまでのビジネスに照らし合わせてみると、事業を立ち上げた当初、受注が不安定であるために、収益を確保するまでに時間を要している。

 サムスン電子の場合も例外ではない。サムスン電子は、2011年末にBtoB支援センターを新設したが成長軌道に乗らず、14年末には事実上の解体となり、事業部内の組織に吸収されるなど紆余曲折を経験している。BtoB事業は民間マンション、ビル設備、娯楽施設、公共部門などをターゲットとしており、受注すれば大量に製品およびサービスを納入する切り札ではある。だが、過去からの信頼関係という企業努力の結晶に支えられる性格を持ち、高いブランド力と互恵を前提とした中長期的なビジネスである。サムスン電子に限らず、韓国企業は一般的に短期的な成果に執着し、先が見えない中長期な事業開拓を不得意としている。サムスン電子が金融監督院に提出した事業報告書によれば、


つづきは本紙へ