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2018/05/25

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第51回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

◆未来戦略室に代わるタスクフォース(TF)新体制◆

 サムスングループは昨年2月に政経癒着の元凶と指摘された未来戦略室を解体して以降、各関連会社の理事会中心による自主経営の下で意思決定する構造となったものの、グループ全体の戦略的機能を失った。現在、未来戦略室そのままの復活ではなく、電子、非電子、金融系列企業を軸に3つのタスクフォース(TF)を創設して、系列内の投資や人事などを調整するミニ未来戦略室を立ち上げた。

 3つのTFは、サムスングループの主力事業系列別に構成され、サムスン電子を核とする「事業支援TF」(2017年12月)、非電子製造系列企業には「EPC(設計・調達・施工を総合的に遂行する大型プロジェクト事業の意味)競争力強化TF」(18年1月)、金融系列グループには「金融競争力向上TF」(18年2月)の名称で設置された。

 ただTFチーム長の経歴からの印象は、未来戦略室の復活を臭わせる。事業支援TFでチーム長を引き受けた鄭賢豪社長は、11年未来戦略室経営診断チーム長(副社長)を経て14年未来戦略室人事支援チーム長(社長)であった。EPC競争力強化TFチーム長に任命された金明洙副社長と柳虎錫専務もやはりかつて未来戦略室で戦略2チームと金融一流化推進チームの経験者たちである。サムスン電子の理事会議長に選任された李相勲社長もかつて未来戦略室の戦略1チーム長の経験を持つ。

 それぞれのTFチームに配属されたスタッフの多くが旧未来戦略室の出身者で固められている。

 巨大な財閥に成長した現在、グループ全体をコントロールする組織は必要である。系列企業62社合計の売上総額は300兆㌆超、総資産は363兆㌆、従業員数は約50万人(韓国内10万人)に達する。1959年に創業者・李秉喆氏が秘書室を創設して以来、一時的な空白期はあったものの、構造調整本部、戦略企画室などと名称変更しながら、グループの司令塔は存続してきた。


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