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2018/06/22

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第52回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第52回

◆「ポスト半導体」を加速するサムスン◆

 現在、サムスン電子が直面している難題は、半導体の次に屋台骨となる新規事業の不在である。今年に入ってからも半導体を稼ぎ頭とした体制に変わりなく、DRAMやNANDフラッシュへの過度の依存が続いている。中国企業による半導体量産体制の完成と東芝・マイクロンの増産により、それらの価格低下は避けられないとみられる。サムスン電子にとっての半導体は、全体営業利益の74%(2018年第1四半期)、売上高営業利益率55%とまさに利益の源泉である。そうした危惧を払拭しようと活動している組織が、2012年と翌年に設立されたサムスングローバル戦略革新センター(SSIC)とサムスンネクストLLC(有限責任会社)であり(図表①)、サムスン電子の未来技術を確保するためのアンテナの役割を担っている。

 サムスンネクストは当初、未来技術を発掘するだけの役割を担っていた。発掘したベンチャー企業や先端技術がサムスン電子にとって有望であると判断されれば、その後、サムスン電子本社が直接資本提携や投資に乗り出す仕組みであった。現在のサムスンネクストは、サムスン電子の投資専門の子会社として役割を拡大し、韓国内はもちろん、米国・シリコンバレーの他、サンフランシスコとニューヨーク、ドイツ、イスラエルに事務所を置くなど、グローバルな視点に立つ投資推進役となっている。設立から5年間に78社のベンチャー企業に出資し、うち買収した企業は16社に及ぶ。

 投資先もこれまでのアメリカ(全体の70%)、イスラエル(同25%)などの特定地域に加えて、スウェーデン、スイス、ハンガリー、ベルギー、ポルトガル、ギリシャ、オランダなどヨーロッパ全域に拡大している。例えばハンガリーでは、自律走行のためのAI技術を持つ企業に投資し、ベルギーではモノのインターネット企業に投資した。


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