ここから本文です

2018/09/28

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第55回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第55回

◆文在寅政権とサムスン財閥◆

 現在は病臥にある李健熙会長が5大有望事業を発表した2010年5月と三代目・李在鎔副会長が打ち上げた18年8月の4大未来成長事業の発表は、その背景とタイミングが類似している。李健熙会長の場合、不正蓄財や賄賂などが発覚した後、有罪の判決を受けた4カ月後には特別赦免となって復帰し、また李在鎔副会長の場合も、1審で有罪となったものの今年2月の2審で執行猶予となり、最終結審を待たずに経営に復帰している。いずれも経営復帰後に、政権の意向を忖度したように新戦略を発表している。

 李健熙会長の時代を振り返ってみると、サムスン電子の設備投資規模は08年に14兆㌆、09年8兆㌆と大幅に減った。これは07年、李健熙会長の借名口座による脱税や粉飾決算などが、金勇澈弁護士により暴露された事件で、李健熙会長が08年に会長職を離れ経営の第一線から退いたことによる。

 09年8月に李健熙会長の有罪が確定したが、同年末、李明博元大統領は、李健熙会長がIOC委員であったことから、平昌オリンピック誘致を条件に特別赦免を与えた。

 特別赦免を受けて経営に復帰した李健熙会長は、10年3月に5大有望事業を発表し、サムスン電子の設備投資を09年の8・1兆㌆、研究開発を7・6兆㌆の計15・7兆㌆から設備投資21・6兆㌆、研究開発9・4兆㌆の合わせて31・0兆㌆(前年比97・5%増)と一挙に拡大した。

 サムスングループ全体では、太陽電池、自動車用電池、LED(発光ダイオード)、バイオ製薬、医療機器などの5大有望事業に加えて半導体・LCD事業を含めると、約50兆㌆の投資計画となった。

 李在鎔副会長の場合も、崔順実ゲートにより17年2月に逮捕されたが、この年の設備投資は42・8兆㌆(前年比77・6%増)に膨れ上がっている。18年2月に執行猶予を受けてから半年後、グループ全体で3年間で180兆㌆(韓国内150兆㌆、海外30兆㌆)、このうち4大未来成長事業には25兆㌆を投資すると発表した(図表①)。


つづきは本紙へ