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2018/07/27

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第53回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

◆深刻の度を増すサムスン中国事業の不振◆

 今年上半期までのサムスン電子の業況をみると、半導体以外の事業はすべて精彩を欠いている。LCD(液晶ディスプレイ)事業は、過当競争から赤字転落の恐れがあり、携帯電話事業もギャラクシーS9が目標未達で、この挽回に広告宣伝費を増やしているが、売り上げへの効果は限定的である。

 サムスン電子にとって三大市場は中国、北米、インドである。二番目の市場である北米では、冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機などの生活家電市場でサムスン電子とLG電子が健闘しているものの、地元のワールプール(米国の家電製品の大手製造販売企業)が依然トップを維持している。

 昨年、サムスン電子の米国法人は赤字に転落している。米国における採算悪化の主因には、市場の主導権争いに伴う過当競争と中国企業との差別化戦略を推進するために、プレミアム製品の販売促進マーケティングの費用が大幅に増加したことが挙げられている。

 三番目のインド市場では過去3年間成長傾向がみられるものの、携帯電話市場において中国企業のシャオミにトップの座を奪われるなど、すでに安泰ではなくなっている。

 サムスン電子は、インドの携帯電話市場の巻き返しに動いており、この7月にノイダ第二工場を竣工し、現在の月産500万台から2020年末には1000万台に引き上げる計画である。サムスン電子にとってインドの生産拡大は、ガラケーからスマートフォンへの代替需要を見込むと同時に、成長する中東やアフリカなどへの輸出拠点の位置づけでもある。

 しかしサムスン電子にとって深刻の度を増しているのが、最大の販売先・中国市場である。中国市場での携帯電話などの売り上げは激減している。13年当時にはトップシェアの19・7%を誇っていたサムスン電子の携帯電話が、今年第1四半期にはわずか1・3%のシェアにまで低下し、回復の糸口がつかめないまま現在に至っている。携帯電話不振の原因は何と言っても華為、シャオミ、OPPO、VIVOなど中国企業に圧倒されているためである。


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