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2019/02/22

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第60回                                                              国士舘大学経営学部講師 石田 賢 氏

  • 揺らぐサムスン共和国 第60回

◆創業50周年、サムスン電子の光と影◆

 サムスン電子は今年2月に創業50周年を迎えた。グループの中核企業であるサムスン電子は、50年間に売上高は3700万㌆から243兆㌆と659倍、従業員数に至っては36名から10万名以上と実に2862倍、この間の当期純利益の推移をみても、その飛躍ぶりが伺える(図表①)。昨年は売上高243兆7714億㌆、営業利益58兆8867億㌆、当期純利益44兆3449億㌆と過去最高の実績を収めた。

 このように順調に成長してきたサムスン電子であるが、現在に至るまでを検証すると、オーナー家主導の事業再編と継承権の世襲にはいつも暗い影がつきまとう。

 これまでの継承に関わる影の部分を簡単に振り返ってみよう。

 1995年、李健熙会長は、息子の李在鎔副会長に現金61億㌆を贈与して贈与税16億㌆を支払い、李在鎔副会長は残りの資金で非上場系列会社であるサムスンエスワン(警備会社)とサムスンエンジニアリングの株式をそれぞれ23億㌆、19億㌆購入した。購入直後の96年1月に両社が上場され、李在鎔副会長は42億㌆で購入した両社の株式を600億㌆で売却した。96年12月、李健熙会長はエバーランドの転換社債(株式に転換する権利の付いた社債)の97%を、李在鎔副会長(当時チーム長)に安い価格で売った。李在鎔副会長はこの時手に入れた48億3091万㌆の転換社債を、エバーランドの株式62万7390株に変えたことで、エバーランドの25・1%の株を持つ筆頭株主になった。

 李健熙会長が2014年5月に急性心筋梗塞で倒れた後、三代目への継承は大がかりとなり、一気に加速させている。

 2013年12月、エバーランドと第一毛織が合併し、翌年7月にエバーランドは第一毛織と社名を変更した。第一毛織がグループのコントロールタワーとなり、エバーランドの筆頭株主であった李在鎔副会長がそのまま第一毛織の筆頭株主に治まった。14年12月に第一毛織が証券市場に上場され、李在鎔副会長の株式資産は801億㌆から3兆5447億㌆と44倍も膨れ上がった。

 さらにサムスン物産と第一毛織の合併が計画され、これが実現すれば、李在鎔副会長はサムスン物産の筆頭株主となり、三星生命を通じてサムスン電子をコントロールできるようになる。この時、両社の合併で李在鎔副会長がサムスン物産により多くの持ち分を持つためには、


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