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2021/06/25

<Korea Watch>揺らぐサムスン共和国 第88回                                                              国士舘大学経営学部客員教授 石田 賢 氏

◆電装事業の不振に苦しむサムスン電子◆

 2014年の経営計画において成長事業のひとつに挙げられたのが電装事業であり、翌年12月に李在鎔副会長は、経営支援室直属の電装事業チームを立ち上げた。16年11月、李副会長が登記理事になって最初に手掛けたビッグプロジェクトが、電装会社ハーマン(1956年設立)の80億㌦買収であった。それから4年半経過した現在、その後目立った大型M&Aはない。

 サムスン電子の主力事業である半導体とスマートフォンにやや陰りが見られ始めた現在、次世代の成長の柱として大いに期待されたハーマンであったが、相変わらず精彩を欠いている。

 ハーマンは、サムスン電子に買収される以前、15年売上高営業利益率が6・8%、16年も同8・1%と高収益を上げていた。しかし買収後の17年同0・8%、18年同1・9%、19年3・2%、そして昨年には0・6%まで低下した。ただ今年第1四半期のハーマンの業績をみると、売上額が2兆3673億㌆、営業利益が1131億㌆、売上高営業利益率は4・8%にやや回復してはいる(図表①)。

 サムスン電子にとって電装事業は、半導体、第5世代(5G)移動通信、人工知能(AI)などの技術を生かす領域と期待され、サムスングループにとって相乗効果を発揮しやすい事業分野とみなされてきた。

 買収後、収益性を改善するためにハーマンは、従属企業の再編に拍車を掛けてきた。主力事業としては、個人向けオーディオと電装部門を温存し、それら以外の従属企業を整理してきた。この結果、ハーマンの従属企業数は買収時に109社あったのが、合併や清算により20年末には68社まで削減した。この選択と集中も成果を出していない。

 こうした経営努力にもかかわらず、売上高そのものは買収前の8兆㌆前後から買収後の9兆㌆前後へと若干改善の兆しが見られるだけで、


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