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2010/06/04

<オピニオン>出前かまくらとアイリス実現の次に                                                                 サムスンSDI 佐藤 登 常務

  • サムスンSDI 佐藤 登 常務

    さとう・のぼる 1953年秋田県生まれ。78年横浜国立大学大学院修士課程修了後、本田技研工業入社。88年東京大学工学博士。97年名古屋大学非常勤講師兼任。99年から4年連続「世界人名事典」に掲載。本田技術研究所チーフエンジニアを経て04年9月よりサムスンSDI常務就任。05年度東京農工大学客員教授併任。08年度より秋田県学術顧問併任。著者HP:http://members.jcom.home.ne.jp/drsato/(第1回から61 回までの記事掲載中)

 韓日間の経済交流が活性化する中、韓国企業で働く日本人技術者やビジネスマンが増えている。本田技術研究所のチーフエンジニアを経て、2004年にサムスンSDI中央研究所の常務に就任、現在は拠点を東京に移し、日本サムスンに逆駐在の形で席を構えた佐藤登さんの異文化体験記をお届けする。

 韓国ドラマ「アイリス」が現在、日本で放映中である。一方、本紙でも2月に紹介したように、横手の「かまくら」がこのドラマと呼応して、ソウルへの「出前かまくら」として本年1月に実現の日の目を見た。

 海外初「出前かまくら」として1月22日から24日まで、清渓広場に作られた「かまくら」にはKBSを始めとする多くの主要マスメディアが取材に訪れるなど、想定外のインパクトがあったことで大成功となった。

 横手市とソウル特別市、および民間の協力と国の補助金によって念願の海外初が実現した。「かまくら」の文化を知っていただくことでのこの交流は、筆者の企画提案から1年6カ月を経て現実になったが、実行に移して頂いた関係者の方々には敬意を表すとともに、今後の新たな企画創りにも弾みがつくものと実感した。

 2009年10月14日から韓国ではイ・ビョンホン、キム・テヒ主演のテレビドラマ「アイリス」が放映され、視聴率は30%以上を維持し、日によっては40%を超えた。これまでのテレビドラマの中で最高視聴率を記録しながら12月中旬に放映が終わった。日本では本年4月から地上波にて放映中で、東京周辺でも秋田のロケ地があちこちで話題になっている。

 全20話のうち、上海やハンガリーも舞台となり、更に冬の日本の雪景色が必要とのことで秋田が選ばれロケの拠点となったが、秋田を舞台とするシーンが韓国では10月までに放送が終わり、その後に大変な反響を呼び大きなうねりを生じた。

 秋田を代表する男鹿半島、阿仁の山々、日本一深い湖の田沢湖、その山間に位置する乳頭温泉郷、そして重要無形文化財となっている「なまはげ」、「かまくら」等々がドラマに出てきたが、地元や近隣では有名でも、日本の中でも十分に知れ渡っていないのも事実である。そんな秋田の自然と文化を宣伝してくれたのが「アイリス」である。

 しかしロケ地として、この「かまくら」は元々計画にはなかった。横手出身の筆者としては折角素晴らしい400年もの歴史のある「かまくら」はロケには向いているのではないかと思い、筆者と韓国人コーディネーターがドラマ制作会社へ直接働きかけたことで、ロケ地として横手城と「かまくら」が採用されるに至った。主演同士がこの「かまくら」を背景にデートする重要な場面に活用され、意味のある光景として放映された。

 今後、このドラマは世界十数ヶ国で放映されることになるから、秋田にとっては世界に宣伝できるビッグチャンスとなっている。

 1月のソウルでの「出前かまくら」のイベントが終わって、2月12日からは横手での「かまくら」行事へと続き、筆者にとっても格別な「かまくら」という意味で今年の「かまくら」へ12年振りに足を運んだ。久し振りに訪れた「かまくら」は、冬の秋田を幻想の夜に造り替えていた。そして以前とは違って韓国人の姿が多かったことでドラマの効果を自ら実感した。

 日本では3月からCSでの「アイリス」の放映開始。私も毎週見ているが、内容と光景が素晴らしく調和しているし、BGMもすこぶる良い。4月からは地上波での放映と、毎月のように関連したイベントが国境を越えて繋がっている。私の周辺にも多くの「アイリス」ファンがいる。見逃すことができないという声が多い。

 この「アイリス」はあまりにも人気を博し、制作側ではパート2を企画中とのこと。現在のドラマの最終回で主演が生きているのか死んだのか不明のまま終わるというところに制作会社の戦略が見え隠れする。

 これに関連して日本では既に鳥取県が名乗りを挙げロケの誘致に積極的だそうだが、制作会社は沖縄にも興味をもっているとのこと。

 他県もロケ地として誘致したい気持ちはいとも簡単に理解できる。しかし、秋田がブレークしたから真似てという単純な発想ではなく、そこには脈絡、すなわちパート2への繋ぎが重要と考える。

 そこで提案だが、折角の冬の秋田で盛り上がった本ドラマのパート2では夏の秋田の別の顔を登場させることができないか。そこにはまるで違う夏の秋田があることと、ドラマのシーンとしてマッチする素晴らしい芸術文化があるからだ。

 その候補に最も相応しいものが世界一の大曲の花火大会である。今は衛星放送によって海外にも知れ渡るようになったが、この花火大会の開始のもとでそのドラマが始まるのである。花火に仕掛けられた主演の生存を示すメッセージが夜空に現れ、それこそドラマティックにストーリーが運ぶ展開である。すなわち、世界一の花火にオープニングを託すという仕掛けである。

 その後に、鳥取や沖縄に場所が移るにしても、パート2への繋ぎ役に今年百周年にあたる第84回の記念すべき花火大会を活用すれば、ドラマの効果が花火の大輪のように一層高まるのではないか。

 これは筆者の独断的構想であるが、是非関係者間での協議によりこのようなプロデュースが実現できないものか。秋田が一枚岩になってその構想を示せれば決して絵に描いた餅ではないように思うのだが。


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