ここから本文です

2010/10/08

<オピニオン>階層別日韓文化の研究と交流                                                                 サムスンSDI 佐藤 登 常務

  • サムスンSDI 佐藤 登 常務

    さとう・のぼる 1953年秋田県生まれ。78年横浜国立大学大学院修士課程修了後、本田技研工業入社。88年東京大学工学博士。97年名古屋大学非常勤講師兼任。99年から4年連続「世界人名事典」に掲載。本田技術研究所チーフエンジニアを経て04年9月よりサムスンSDI常務就任。05年度東京農工大学客員教授併任。08年度より秋田県学術顧問併任。著者HP:http://members.jcom.home.ne.jp/drsato/(第1回から65 回までの記事掲載中)

◆相互理解で国際交流の質向上◆

 産業のグローバル化が一段と加速している中で、企業の海外進出、企業間M&A、人材の流動化などが進んでいる。今後の世界の中における企業と個々人のありようを考えると、小さな枠の中だけで思考するだけでは限界があり、大きな舞台を想定した中での発想が求められる。

 芸術やスポーツなどはその最たるもので、世界で闘える人材育成への期待がかかる。上昇志向を目指せば目指すほど、その舞台は世界へと続く。

 このような動きの渦中にあって、日本のあるいは日本人の閉鎖的考えが取沙汰される記事が俄かに多くなってきた。とりわけ若年層にそのような傾向が見られるとのことだが、確かに統計をとると、日本の若者の上昇志向の不足が隣国の韓国や中国に比べて際立って低いのが気がかりである。このように至っている背景には学校や家庭での教育に起因する部分が少なからずあると思われる。日本の中にいるだけでは、なかなか外が見え辛い。若い世代から直接でも間接でも外を見るような機会を得るかどうかでも大きく変わるであろう。筆者がこれまでの2年間、秋田県学術顧問の活動を通して見てきた部分である。

 韓国に在住していた2008年および09年に、秋田県の高校が修学旅行で韓国を訪問した。以降も秋田から韓国への修学旅行は増加する方向にある。

 今年になってからは、高校の校長達がこぞって韓国を訪問した。今後の各高校が韓国に修学旅行を計画するにあたっての価値分析のためである。いずれの場面でも、筆者はその見学の一環としてソウル江南にあるサムスン電子の広報館「d’light」、および近未来住宅を紹介する「レミアン・ギャラリー」を推薦し、随時見学していただいている。

 サムスン製品が日本の家庭や個人を対象にビジネスを展開していないので理解を深めていただくには最適である。それを聞いた他校からも訪問の希望が寄せられ、なるべく実現できるように取り計らっている。

 高校の修学旅行は韓国の場合、希望者を対象としており、今のところ40名程度での行動であるが、たいてい韓国の高校との国際交流を図っている。テーマを決めて議論し発表するようなパターンが多いが、常に日本側の高校生が口にすることは圧倒的に韓国の高校生の英語の水準が高いということである。

 このような刺激を受けることで、目的意識や目標が現実の形に浮き上がる。外に出ることの意義はこのような所から始まる。

 一方、大学側での韓国文化研究センターのようなものが着々と起こりつつある。日本では最初に九州大学へ研究機能が創設され独立した研究遂行のもと、研究者の交流も活発である。

 その後には、慶應大学、そして最近では東京大学にも創設され、アカデミックな場での活動が活発になってきた。アジア全体に対する研究機能という見方をすれば、もっと多い大学にあるだろうが、韓国が最近の研究対象になっていることに相違はなく、秋田にある国際教養大学でも現在、韓国を中心に据えたアジアを対象とする研究機能を立ち上げる動きがある。

 企業活動で言えば、従来は韓国企業が日本企業を研究し、ベンチマークするパターンが多かったが、最近は韓国の大手企業の業績が好調なこともあって、日本の企業が韓国の企業を研究してベンチマークする姿が目立ってきた。

 産業ベースでは昨今の円高とウォン安の相対関係のもと、日本企業が韓国に進出して工場建設や合弁事業を行うケースも増え、国際協調も進んでいる。世界の通貨事情と今後の行方にリンクした形で、どのようなスタイルが最適かを考える状況になっている。

 そのような意味からしても、産業界側での韓日研究とビジネス交流、大学側での研究交流も自ずと増加する傾向を辿るだろう。

いずれにしても相互の理解を深めることで国際交流の質が向上する。そうなることで双方のビジネスに対する発展も期待でき、大きな展望が開けることになる。

 政府間レベルの協議では未だに解決すべき課題を有しているが、このような課題を克服解決していくことで、両国がアジア全体へ良い意味で影響を及ぼしてほしいと願う。


バックナンバー

<オピニオン>