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2013/09/06

<オピニオン>深読み韓国経済分析 第8回 韓国というブランドが創る未来                                                      リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

  • リーディング証券 李 俊順 代表取締役社長

    イ・ジュンスン 1968年韓国京畿道生まれ。90年渡日し、96年東洋大学経営学部卒業。96年現代証券入社、97年から現代証券東京支店駐在、07年韓国投資証券を経て09年リーディング証券入社、10年投資銀行本部長、11年代表取締役専務、12年7月代表取締役社長に就任。

  • 深読み韓国経済分析 第8回 韓国というブランドが創る未来

◆安定した継続的運営めざせ◆

 2000年代に入り、「冬のソナタ」の大ブレークをはじめ、数々の韓国ドラマが日本で人気を集めるのを見て、その時私はとても驚いていた。約20年前、私が初めて日本に来た頃は、韓国のドラマどころか韓国文化に接する機会はほとんどなく、韓国という国を知る人も興味を持つ人もあまりいなかったからだ。だがここ数年で状況は大きく変わった。今の日本では、韓国文化はすっかり定着し、ドラマ以外でも韓国の音楽や映画、料理、ファッションなどを通じて「韓国」という国に興味津々な人々によく出会えるようになったのである。

 ここまで状況を変化させたのは、「韓流ブーム」と呼ばれる文化コンテンツのパワーであった。韓流ブームは、2000年以降、主にドラマの輸出を通じて日本をはじめ、フィリピン、ミャンマー、ラオスなど、アジア各国で急速に広まった。

 韓国ドラマの人気は、そのコンテンツ内容にとどまらず、韓国のファッション、料理、電機製品など、様々な分野に広がり、大きな経済的波及効果を生んだ。韓国は韓流ブームという波に乗り、韓国というブランドを世界に浸透させ国家イメージを向上させることを可能とした。

 その結果、1997年の通貨危機以来、韓国の新たな成長産業として発展してきた文化コンテンツ産業は、その輸出額が10年間で10倍以上まで拡大している。

 世界経済の中心は製造業からサービス業へシフトしており、国や企業にとって単なるものづくりを超えた様々な文化の創造は大きな競争力となる。韓国の朴政権は、創造経済の下、文化コンテンツ産業を今後もさらに強化していくという。韓国経済にとって文化コンテンツ産業はなぜ重要なのか、その潜在的可能性と成功するための要素を考えてみたい。

 第一の可能性は、創造的アイデアと知識を基盤とする文化コンテンツ産業は、他の産業よりも付加価値や雇用を生み出す効果が大きいという点である。韓国輸出入銀行の経済研究所によると、文化コンテンツの輸出が100㌦増加すれば韓国の関連製品の輸出は4倍以上の412㌦増加するという。また、雇用創出の側面では10億ウォンの付加価値において、製造業で9・6人の雇用が生まれるのに対し文化コンテンツ産業では18人の雇用が創出されるという結果が出ており、その経済的効果が表れている。

 次に注目したい可能性は、韓国国内の文化コンテンツ産業が今成長軌道にあることである。08年から11年までの同産業の売上高と輸出額は、年間平均9・2%、22・5%で伸びており急速な成長を遂げた。特に、昨年は世界的な景気低迷にもかかわらず、売上高は前年比6・9%増加の89兆ウォン、輸出額は11・6%増加の48億㌦を記録し、その勢いを見せている。

 今年7月、文化体育観光部と未来創造科学部は、創造経済の実現に向けて17年まで文化コンテンツ産業の市場規模を120兆ウォン、輸出額を100億㌦まで成長させるコンテンツ産業振興計画を発表した。日本でも文化コンテンツ産業を後押しする「クールジャパン」戦略は国の主要政策として掲げられているなど、世界的にも同産業は経済を牽引する原動力として、その重要性はますます高まっている。

 今後、韓国の文化コンテンツ産業が経済的効果を生み出せる原動力として機能するためには、世界で受け入れられる質の高い文化コンテンツの開発が欠かせない。そのための政府や企業の取組みは、創造的な人材の育成、人材とコンテンツが育つ環境の整備、制作されたコンテンツを最大限に活かす最適なブランド化戦略に結びつくものでなければならない。次の韓流ブームはどこから始まるのか、再び期待が高まる。


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