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2014/09/12

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第20回 平和に敏感なビジネスセンスを磨く                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 教授

    キム・ミドク 多摩大学経営情報学部および大学院経営情報学研究科教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所、三井グループ韓国グローバル経営戦略研究委員会委員などを経て現職。

◆普遍的価値観の触れ合いが信頼関係に◆

 アジア・ユーラシアダイナミズムといかに向き合うのか。この時代潮流は、脅威として捉え、対抗・牽制策だけを考えれば、かえって問題をこじらせ、対立や危機を拡大しかねない。しかし機会として捉えて、活用・協調策を考えることができれば、地政学的知(ゲオポリティカルな視点)となり、グローバル戦略力となり得る。そこでアジア・ユーラシアダイナミズムを機会として捉えるには、その中心・構造にあるアジアパラドックス(政経矛盾)と真正面から向き合わなければならない。このアジアパラドックスは、一般的に政治的側面だけが強調され、単なる国際問題と捉えられがちである。しかしその本質においてエネルギー資源やビジネス利権など経済問題があるからこそ、政治がうごめくという側面は否めない。したがってアジアパラドックスは、経済に政治が絡んだ「グローバルビジネス・メガトレンド」と捉えるべきであろう。ただ、懸念されることは、政治が経済に向かえば向かうほど、平和が軽視される傾向にあることだ。やはり経済は、政治に振り回されることなく、平和の実現のためにその機能と役割を果たすものではなかろうか。これこそが本来の経済や企業の在り方と考える。まとめるならばビジネスパーソンは、アジアパラドックスに対する理解を深めることによって「グローバルビジネス・メガトレンド」を捉え、平和に対して敏感になることが大切である。これこそがアジア・ユーラシアダイナミズムと向き合うということである。

 次にアジアパラドックスに対する理解を深め、平和に対する敏感さを磨いていく。アジア、とりわけ北東アジア政治情勢は、冷戦(米日韓と中ロ朝の対立による地域冷戦)、北朝鮮問題(核・ミサイル・拉致)、領土問題(日中=尖閣諸島、日韓=独島・竹島、日ロ=北方領土、韓半島=北方限界線)、歴史認識(韓中と日本=教科書・靖国神社参拝、韓半島と中国=高句麗問題)、環境・エネルギー問題、日中ヘゲモニーなど対峙の構図にあり、葛藤が深まっている。特に領土問題に端を発し、戦後最悪と言われるほど国際関係が悪化している。これらの領土問題は、100年以上にわたって各国のリーダーや国民が、お互い我慢するとともに知恵を絞り、解決できなくても悪化はさせないようにそれなりに上手く管理してきた。しかしここへきて、各国のリーダーやメディアの見識不足なのか、解決どころか、事態を悪化させてしまった。この原因は、どこにあるのか、また誰が悪いのか。この解答は、世界のどの歴史学や国際法の論文をもってもさまざまである。ただ、一つ言えることは、これらの問題は1972年沖縄返還協定、52年サンフランシスコ講和条約、53年韓国戦争休戦協定がネックとなっており、これらすべてに米国が深く関与しているということだ。尖閣諸島は沖縄返還協定、独島・竹島と北方領土はサンフランシスコ講和条約、韓半島の北方限界線は韓国戦争休戦協定においてどちらの領土としても解釈できるように曖昧な条文となっている。米国は、意識してか知らずか、このような領土問題の火種を残したことになる。これを米国は認めないだろうし、また認めたとしても仲裁役に回るということは考えにくい。そうであるならば、経緯はどうであれ、また米国の顔色を伺うことなく、各国が主体的に真正面から向き合う必要がある。向き合うというのは、それぞれの立場を主張するだけでなく、解決することである。できないにしても解決に向けて一歩は、前進させるべきだ。最低でも悪化させずに現状を維持するための外交センスが必要だ。領土問題は、解決に向けた前進は簡単なことでない。リーダーには、グローバルセンスに長けたリーダーシップや多くの国民からの信頼や知恵を集められる人徳が求められる。果たしてこのような理想的なリーダーがこの時代、そして世界に存在するのであろうか。もしそれぞれの国に存在しないのであれば、「棚上げ」、「先送り」を正当化したくはないが、次世代のより優秀で知恵のあるリーダーが誕生するのを待つしかない。待てないのであれば、国民の高い問題意識や志によってそのようなリーダーの育成を急ぐべきではなかろうか。

 因みに世界の領土問題は、85カ所あったが32カ所が解決されている。その解決方法は、7つに集約できる。①「島を岩と認めて領土問題は存在しない」、②「分割して領有する」、③「中立地帯として解釈する」、④「領有権は認めないが統治権は認める」、⑤「譲渡する」、⑥「相手の領有権を認める」、⑦「国際司法裁判所の仲裁による解決(16カ所)」である。したがって領土問題の解決策は誰もが知っているのに、リーダーシップと信頼関係がないために解決できていないということになる。


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