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2014/06/20

<オピニオン>転換期の韓国経済 第53回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第53回

◆内閣改造に伴う経済重視◆

 韓国の今年1―3月期の実質GDP成長率(前期比、以下同じ)は前期と同じ0・9%増(前年同期比は3・9%増)となり、景気の持ち直しが続いていることが確認された。需要項目別では、民間消費が前期の0・6%増から0・2%増へ、設備投資が5・6%増から1・9%減へ減速した一方、建設投資が5・2%減から5・1%増、輸出が1・4%増から1・5%増へ加速した。

 こうしたなかで、景気先行きの懸念材料として、次の二点が浮上している。

 一つは、4月16日に発生した世越号沈没事故の影響である。事故後、旅行やイベント、宴会などが相次いで中止されたため、消費の一時的な冷え込みは避けられないものの、時間の経過とともに徐々に回復に向かうものと予想される。ただし、消費の本格的回復には所得・雇用環境の改善と家計の債務調整の進展が不可欠である。

 もう一つは、最近のウォン高の加速である。ウォンの対ドルレートは昨年9月から今年3月あたりまで、1㌦=1050~80ウォン台の範囲内で推移してきたが、4月に心理的抵抗線とみられていた1050ウォンを割って以降ウォン高が加速し、最近では1010ウォン台にまで上昇している。

 一部で利下げを求める声も出ているが、政策金利は据え置かれたままである。韓国銀行が利下げに踏み切らない理由には、①今年の経済成長率が潜在成長に見合う4%になる見通しであること、②米国の量的緩和政策の終了が予想されること、③金利が歴史的にみて低水準で、一層の緩和には副作用があること、などが指摘できる。


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