ここから本文です

2014/10/24

<オピニオン>転換期の韓国経済 第57回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第57回

◆アベノミクスと韓国経済◆

 アベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢から成る)が正念場を迎えている。これまで打ち出した大胆な金融政策と機動的な財政政策が必ずしも期待したほどの成果を上げていないほか、成長戦略の始動も遅れているからである。2%のインフレターゲットを設定し、異次元の金融緩和を進める政策が発表されて以降円安が進み、さらに最近、米国の景気回復に伴う金利上昇観測から一段の円安となった。

 円安は輸出企業の業績改善と賃金引上げなどの動きにつながった半面、輸入物価の上昇を通じて中小企業の経営、庶民の生活にマイナスの影響を与えている。

 実質金利の低下(期待インフレ率の上昇)による投資の増加が期待されているが、実質金利の低下が投資を増加させるかは一概にはいえない。投資の増加には需要が拡大し、期待投資収益率が高くなる必要がある。また、円安によって輸出が増加すると期待されたが、さほど伸びていない。おそらくこれが最大の誤算といえるかもしれない。

 輸出が増加しない主因は企業の海外生産の拡大である。自動車産業を例にとると、欧米諸国との通商摩擦や円高を契機に、80年代以降海外生産を本格化させてきた。「需要のあるところで生産する」というのが、いまや基本原則となっている。国内生産を重視するトヨタ自動車でも、海外生産が国内生産を大幅に上回っている(図)。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>