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2014/11/21

<オピニオン>転換期の韓国経済 第58回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 転換期の韓国経済 第58回

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第58回①

◆危機を革新に◆

 韓国を代表する大企業の業績が軒並み悪化している。今年7―9月期の営業利益は、サムスン電子が前年同期比(以下同じ)60・0%減、現代自動車が18・0%減となった。現代重工業は3期連続の赤字となった。

 とくにサムスン電子に関しては、「サムスンショック」として高い関心が集まっている。日本企業のなかにも、影響を受けて業績が悪化した企業が現れた。

 稼ぎ頭であったITモバイル部門(中心はスマホ)の大幅減益に注目する見方が多い。たしかに減益幅は予想を超えたかもしれないが、①営業利益がスマホに過度に依存している、②スマホ市場の成熟化により成長の余地が小さい、③中国製低価格製品の台頭によりシェアが奪われるなどは、以前から問題点として指摘されてきた。むしろ今期の決算で注目すべきなのは、デバイス部門(主として半導体)がITモバイル部門を上回ったことである(下図)。サムスン電子が半導体事業で成長したことを考えると、ある意味で「先祖がえり」といえる。

 同社は今年中国でNAND型フラッシュメモリーの生産を開始したほか、韓国でも半導体新工場の建設計画を発表するなど、半導体事業を今後の収益の柱にする方針である。半導体に関しては、自動車関連(ナビゲーションやセンサー、カメラを含む衝突回避装置、自動運転技術など)、交通システムを含むスマートシティー関連、ビッグデータ関連などで、今後も需要の増大が見込まれるため、この分野における事業の成否が同社の今後を大きく左右することになる。


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