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2014/05/30

<オピニオン>韓国経済講座 第163回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員

  • 韓国経済講座 第163回

◆韓国式海外次世代育成◆

 韓国の国内中小企業は海外の韓国移民企業と提携する民族経済ネットワークを作り上げている。しかも韓国知識経済部が資金支援し、海外移民企業の連合体である海外韓人貿易協会を後押ししているのだ。政府が海外にある同胞企業を支援することで国内中小企業の国際化を進めているのである。

 こうした官民協力の海外市場開拓の取り組みが日本にあるかと言うと今はない。海外移民企業の連合体は存在する。和僑会がそれだ。和僑とは祖国日本を離れ、中長期的に異国の地に住み、そこで生計を立てている日本人のことを呼ぶ、としている。和僑会は東アジアに進出している日本企業人が2004年に香港で創設したのがきっかけで、香港和僑会を始め東南アジア、中国などに海外で7、国内で8の和僑会ネットワークがある。13年に開催された香港和僑会年次総会によると、香港の会員数は継続会員47名、新規会員45名(合計92名)、会員業種はサービス71名、製造21名となっている。主な活動は、6分科会で講演会や情報交換などの会員間交流と、企業に関する相談、起業をサポートする「和僑キャピタル」を立ち上げ、海外企業人の支援を行っている。しかし、これらはすべて民間で行っており、政府との関わり、政府支援はまだない。

 韓国式海外企業人支援は政府との協力で行われているところに特徴がある。海外企業人で構成される海外韓人貿易協会(World OKTA)がそれである。同協会は1981年に海外移民企業人と国内経済との連携強化、国内経済発展の支援などを目的に設立され、14年4月現在68カ国130都市に支部を置いている。以来33年間韓国輸出の一部の受け入れ母体として世界各地で支え続けているのだ。

 国内外の企業間ビジネス拡大のみならずWorld OKTAの事業では、将来を担う次世代教育にも注力している。具体的には国内外貿易実務教育を通じて未来の次世代経済リーダーを養成して韓民族アイデンティティーを高揚させるため03年から毎年、次世代貿易スクールと称して、母国で行うスクールと海外支部で行うスクールに分かれる教育プログラムだ。また、この事業は貿易実務や海外経済事情教育のみならず、韓国の有望中小企業アイテムを開発して中小企業の海外進出を後押しするとともに、現地専門家を集中養成して国内中小企業に市場を提供することも狙っている。

 14年度次世代教育プログラムは、母国訪問教育スクールは7月16日~22日の6泊7日で、連合ニュースと城南産業振興財団が協賛し、京畿道楊平郡のKOBACO研修センターで世界127支部を対象に次世代精鋭100名を選抜して行われる予定である。一方、海外支部で行われる次世代貿易スクールは、全世界16カ国39都市での開催が決定しており、そのほとんどが6月から7月に予定されている。

 掲げた表は14年の開催都市であるが、これまで次世代海外現地教育が十分行われてこなかった5個支会(都市)が新たに試験的開催地として追加された。今年の新機軸としては、去年試験的に導入した施行した「挑戦プログラム」を共通課題で施行する予定だ。挑戦プログラムは養成した次世代を活用し、実質的な輸出市場開拓が可能になるように国内中小企業支援事業団と連携してビジネスプログラムを開発する科目である。次世代参加者が国内中小企業の中で有望企業のアイテムを対象に海外輸出または起業計画樹立案を受けて実行に移すようにするものだ。計画案の実現可能性によって中小企業と協議後支援可能な事項協議などを通じてインセンティブ提供または海外進出などの支援方案を模索する予定である。今年の対象企業は共同主催機関である城南市傘下中小企業の中で、75個の中小企業アイテムを選定して挑戦プログラムで進行する。

 こうした実践的次世代教育が10年以上続けられる中で、韓国の中小企業輸出が支えられており、官民連携を特徴とする韓国式中小企業グローバル展開と人材育成なのである。


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