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2014/08/29

<オピニオン>韓国経済講座 第166回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員

  • 韓国経済講座 第166回

◆二極化の認識と実態に乖離?◆

 人は自分の境遇をその実態よりも良く思わない性向がある。給料が低いと考える人は多いが、高く貰っていると思う人は少ない。客観的に見て自分の給料が妥当なのかと言うよりは、自らの生活への欲望に照らして判断することが多いからであろう。もちろんそれが悪いのではなく、逆に欲望水準を満たそうとする気持ちが、働く意欲を生み出し結果的により高い所得に接近する源泉だと思う。実態よりもよく思わない性向は自らが暮らす社会の在り方へも及ぶことが多い。それは控えめな謙虚さとは異なり、自らの生活実感から生まれる性向である。

 韓国社会に構造化した二極化現象はその典型だろう。構造化したと言うのは雇用・所得機会の縮小が社会に定着しており、負の極にある低所得集団が回復する手立てを容易に手にすることができないからである。こうした状況を東亜日報電子版(2013年10月31日付)は、韓国の人々はこの二極化に関し、「10人中7人(71・1%)は韓国社会の二極化が深刻だと認識している」と報じている。即ち、本人世帯の所得水準を、10段階で評価した場合、本人が考える現在水準の平均値は4・46で、大多数の国民が普通段階の5以下と認識していると言う。

 毎年行っているこの調査では、11年、12年と年ごとに格差認識は改善されていると言う。
別の項目も併せると、調査は努力すれば個人の地位が上がるとし、貧困から抜け出すのは個人的要因に起因しており、韓国社会は個人の努力が報われる機会があると結論付けている。

 また国際的調査機関である国際社会調査プログラム(ISSP)の調査によると、「所得格差は大きすぎるか」と言う問いで、韓国は、そう思う(46・5%)、どちらかと言えばそう思う(43・7%)を合わせると90・2%に及ぶ結果がある。この比率は対象38カ国中17番目に高い(09年「職業と社会に関する国際比較調査」)。先の調査では70%の国民が所得格差が深刻だと考えていたが、この調査では90%が格差が大きいと認識している。


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