ここから本文です

2014/10/10

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第8回 基礎生活保障の問題と課題                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

◆セーフティーネット本来の役割果たせ◆

 20世紀末に韓国では社会保障制度の大きな改革が行われた。特に、労働無能力者のみを対象としていた従来の生活保護制度が廃止され、新しく全国民の最低生活を保障する国民基礎生活保障制度(以下、基礎保障)の導入は、最も大きな意味を持つ。労働能力の有無に関わらず、全ての人々の生活を支える最後のセーフティーネットが誕生したのである。

 導入後十数年間、同制度が貧困者や失業者の救済に大きな役割を果たしてきたことは否めないが、その一方で、大きな問題点を抱えていることも事実である。

 最も重要な問題とされるのが、広範に存在する「死角地帯」(no care zone)である。この問題を明らかにするために、捕捉率(take up rate)、つまり実際の貧困層のうち基礎保障の給付を受けている人々の割合が用いられることが多い。基礎保障の捕捉率に関しては、多様な研究結果がある。

 例えば、韓国保健社会研究院の研究をみると、絶対的貧困率(最低生計費基準)を基準にした場合、この10年間で捕捉率は3割に満たない水準にとどまっており、相対的貧困率(中位所得50%基準)を基準にすると、2割を下回ってしまう。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>