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2015/01/16

<オピニオン>韓国福祉国家を論じる 第11回 社会保障制度の変容                                       東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

  • 東京経済大学経済学部 金 成垣 准教授

    キム・ソンウォン 1973年韓国生まれ。延世大学社会福祉学科卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。東京大学社会科学研究所助教などを経て現在、東京経済大学経済学部准教授。

◆若年層の雇用不安定化で「三層体制」に◆

 社会保障の制度的仕組みをとらえる最も重要なポイントは、社会保険と公的扶助という2つの制度の体系的結合にある。前者は、保険料を財源とし貢献(拠出)原則にもとづいて防貧の役割を果たす制度であり、後者は、税を財源とし必要原則にもとづいて救貧の役割を果たす制度である。この両制度の結合によって、加齢や病気、失業などあらゆる貧困のリスクに対して、まずは年金や医療、失業保険などの各種社会保険で対処し、それで対処しきれない場合は、公的扶助が最後の拠り所として機能するのが、社会保障制度の基本的な仕組みである。韓国で以上のような仕組みからなる社会保障制度が整備されたのは、IMF危機と呼ばれた1990年代末のアジア通貨金融危機のときである。

 IMF危機によって韓国は、今まで経験したことのない大量失業・貧困問題に直面し、それに対応すべく、一方では、雇用保険の適用を全ての労働者へ拡大し、他方では全国民の最低生活を保障する新しい公的扶助として国民基礎生活保障制度を導入した。

 これにより、短期失業者は雇用保険で救済し、長期失業者や貧困者は国民基礎生活保障制度で救済する制度的仕組みがつくられた。

 さらに、これらの改革が進むなか、これまで限定的に運営されていた年金や医療などの社会保険においても改革が行われ、国民皆保険・皆年金体制が成立するに至った。


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