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2015/05/15

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第28回 AIIBとグローバルビジネストレンド①                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部事業構想学科長および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

  • 韓国企業と日本企業 第28回 AIIBとグローバルビジネストレンド①
  • 韓国企業と日本企業 第28回 AIIBとグローバルビジネストレンド①-2

◆北東アジアの新時代を築こう◆

 2015年は、日本敗戦70周年、韓国独立70周年、北朝鮮・朝鮮労働党創建70周年、朝鮮半島分断70年、日韓国交正常化50周年を迎える。この筋目の年に「日本、韓国、北朝鮮は、何を考えるのか」、世界は大変注目している。特に注目している点は、どのような「大人の知恵」を出し合って、どのように北東アジアの新時代を築くかということである。また、15年は、中国大戦勝利70周年、ロシア大戦勝利70周年でもある。中国とロシアも北東アジアの新時代を築くため新たな経済外交戦略を相次いで打ち出している。世界は、中国とロシアのこれらの経済外交戦略を警戒する一方、協力する国々も増えている。その一例がアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立である。

 さらに、「G2(米中)論」を軸に、新たな北東アジア地域秩序を再構築しようとする動きもある。「G2論」とは、「米中2極体制」という意味。米国と中国の2国が、全世界で最重要な大国として対等の立場で協力し、国際的な主要課題に取り組むという発想である。つまり、米中両国が一緒になって世界を仕切るという考え方がG2論である。ただ「G2論」については、賛否両論であり、そのようなものは存在しないという意見もある。

 このように北東アジアを中心としたユーラシア大陸では、政治・経済的地殻変動が起きており、地域経済の統合や地域秩序の再構築も進んでいる。まさしくこれこそが、アジア・ユーラシアダイナミズムである。したがってアジア・ユーラシアダイナミズムをビジネスチャンスとして生かすためには、世界潮流を読み解き、北東アジアの新時代を築くという視点が大切である。そこで世界経済、国際秩序、アジア新時代に影響を及ぼすであろうAIIBについて詳しく分析する。そして日韓企業がいかにこの膨大なアジアのインフラ需要や経済エネルギーを取り込むかを考える。

 AIIBの構想は、13年10月に習近平主席が東南アジア歴訪時に初めて提唱され、中国が主導する新たな国際開発金融機関として世界から注目された。目的は、アジア地域のインフラ開発などに資金を提供すること。本部は北京に設置、資本金は1000億㌦、15年内に設立が予定されている。アジア地域のインフラ投資需要は、アジア開発銀行(ADB)が20年までに8兆㌦になると試算。また、マッキンゼー社が30年までに世界のインフラ投資資金は57兆㌦に達すると推定している。創設メンバーは、当初57カ国である(図表①参照)。創設メンバーの特徴の1つは、主にアジア、欧州、中東の国であること。2つ目は、G7、G20、BRICs(5カ国)、北東アジア(7カ国)、国連安保理(5カ国)のほとんどの国が参加、もしくは参加表明していること(図表②参照)。


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