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2015/07/10

<オピニオン>韓国企業と日本企業 第30回 AIIBとグローバルビジネストレンド③                                                    多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

  • 多摩大学経営情報学部 金 美徳 学科長

    キム・ミトク 多摩大学経営情報学部事業構想学科長および同大学院ビジネススクール (MBA)教授。1962年兵庫県生まれ。早稲田大学院国際経営学修士・国際関係学博士課程修了。三井物産戦略研究所を経て現職。

◆多くの限定的条件要求する既存機関◆

 経営とは、何であろうか。その答えは、経営者や研究者がそれぞれの持論を持っており、多くの名言も残している。筆者が早稲田大学大学院、三井物産戦略研究所、多摩大学にて一貫してご指導を賜っている寺島実郎・多摩大学長は、「経営とは、時代認識だ」と常日頃仰っている。確かに成功した多くの経営者は、「時代が良かった」「時代が味方した」「時代が追い風となった」「時代に欠落したことを補っただけ」などと「時代」を成功要因として挙げている。やはり「新しい時代を創る志」を持つことや、「時代と向き合い」「時代と戦う」ことが、経営者にとって大切ではなかろうか。それでは時代を認識するには、どのようにすれば良いのか。

 一つの方法としては、「歴史観+世界観+人間観=時代認識」という問題意識を持って生活・学習・仕事に取り組んで見てはどうか。歴史観とは、自国の近現代史とグローバルヒストリーを繋げること。世界観とは、国際情勢分析において当事者意識を持って自国や時代との関連性を考えること。人間観とは、世界各国のそれぞれの国民の自尊心には優劣はないという見識を持つこと。

 例えば先進国の国民の自尊心が上で新興国の国民の自尊心が下、金持ちの自尊心が上で貧しい人の自尊心が下、大卒の自尊心が上で高卒の自尊心が下ではないということである。もしこのような考えが少しでもある人は、それだけ知性や品位が低いと言わざるを得ない。

 これは、決して歴史や国際関係論の学術書を読むべきだ、英語を勉強して世界各国を旅行するべきだ、哲学の勉強をするべきだと主張しているのではない。常に歴史に興味を持ち、世界に目を開き、人間を平等に見る姿勢を堅持していれば、自ずと時代に敏感になる。また、本を選ぶ・読む、人を選ぶ・議論する、行動する方向性や中身も変わってくるということである。

 この時代認識の一環として、世界経済・国際秩序・アジア新時代に影響を及ぼすであろうアジアインフラ投資銀行(AIIB)について考察する。前回までの概要、AIIBに対する日米のスタンスとAIIBの問題点に続き、今回は既存の国際金融機関の問題点を分析する。

 中国をはじめとする新興国は、日米が発言力を持ち、総裁ポストを握る世界銀行(出資比率1位米国16・7%、2位日本7・2%、3位中国4・6%)、国際通貨基金(IMF、同1位米国17・4%、2位日本6・4%、3位中国6・3%)、アジア開発銀行(ADB、同1位日本15・7%、2位米国15・6%、3位中国6・5%)に対して不満がある。この解消策・牽制策としてAIIBを設立すると見られている。

 今後、アジアのインフラ整備や開発金融の資金需要は膨大であるのにも関わらず、世界銀行やADBの資金供給能力が全く足りていない。ADBは、アジアのインフラ建設費が毎年8000億㌦(96兆円)の不足が生じると推定している。ADBだけでは、到底、アジアのインフラ建設資金のニーズを満たすことはできない。


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