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2015/11/20

<オピニオン>転換期の韓国経済 第69回                                                       日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

  • 日本総合研究所 向山 英彦 上席主任研究員

    むこうやま・ひでひこ 1957年、東京生まれ。中央大学法学研究科博士後期課程中退、ニューヨーク大学修士。証券系経済研究所などを経て、2001年より(株)日本総合研究所勤務、現在調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。主な著書に「東アジア経済統合への途」など。

  • 転換期の韓国経済 第69回

◆チャイナショックと韓国◆

 韓国の今年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)が前期比1・2%増(前年同期比2・6%増)になった。これまで実施した景気刺激策の効果もあり、民間消費が前期比(以下同じ)1・1%増、固定資本形成が2・9%増と、内需が成長を下支えしたのが特徴的である。

 民間消費が増加している一因には、実質国内総所得が安定的に伸びていること(原油価格下落による効果)もある。

 他方、輸出は0・2%減(輸入は1・3%増)と景気の足を引っ張り、かつてのように成長の牽引役として作用していない。こうしたなかで、政府は輸出拡大策の検討に乗り出したが、海外需要に依存する輸出を政策的に押し上げることには自ずと限界があろう。

 輸出の不振が続いているのは、最大の輸出相手国である中国経済の減速による影響(「チャイナショック」)が大きい。チャイナショックは、①対中輸出の減少、②世界的な荷動きの減少(海運や造船業界に影響)、③中国の過剰生産による影響(石油化学や鉄鋼業界に影響)、④新興国の成長減速など広範囲に及んでいる。最近の韓国の輸出動向をみると、中国向けよりもASEAN向けの方がマイナス幅が大きくなっている。

 アジア諸国のなかで韓国がチャイナショックの影響を最も強く受けるといわれている。その理由として、輸出の対GDP比率が高い上、輸出全体に占める中国向け輸出の割合(対中輸出依存度)が高いことにある。ただし、総じて経済規模が小さくなるほど、輸出の対GDP比率は高くなる。アジア諸国のなかではシンガポール、マレーシア、タイなどが韓国を上回っている。

 韓国の特徴は、対中輸出依存度が25・4%(2014年)と高いことである。ASEANの主要諸国は10~13%の範囲内である。その結果、各国の対中輸出額の対GDP比率を算出すると、韓国が他国よりも高く(上図)、チャイナショックを強く受けることが考えられる。

 韓国が他国よりも早くチャイナショックを受けたのは、対中輸出依存度の高さに加えて、海運、造船などが主要な輸出産業になっていることによる。

 海運業界では13年に、STXパンオーシャンが経営破綻したほか、最大手の韓進海運、第二位の現代商船の業績も悪化した。韓進海運の業績はやや改善してきたのに対して、現代商船では赤字が続き、現在韓進海運との合併が取り沙汰されている。造船業では船舶価格の下落(安値受注)や海洋プラント事業の赤字などにより、現代重工業やサムスン重工業で赤字が続いている。

 以上を踏まえると、韓国が持続的発展を遂げるためには、「過度な」対中依存を是正していくことが課題になる。


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