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2015/01/30

<オピニオン>韓国経済講座 第170回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員

  • 韓国経済講座 第170回

◆互いに見直そう韓日◆

 トリクルダウンで国民は豊かになる。安倍首相は2014年12月18日に衆院解散会見で「企業の収益が増え、雇用が拡大し、賃金が上昇し、消費が拡大していく。経済の好循環が生まれようとしている」と言に力を入れた。その論理はよく言われる「富める者が富むことで、貧しい者にも自然に富が浸透する、滴り落ちる(トリクルダウン)」というトリクルダウン仮説(理論)である。それを見て分かるように表したのが、掲げた、中国ツイッター「微博」が掲載する図である。これは米国で掲載された「フェイスブック」の図を修正したものであるが、言い得て妙である。

 図の説明は省略するが、この図を見るとトリクルダウン(滴り落ちる)と言うよりは、孟子の「水の低きに就く」と言う故事を思い出す。孟子が梁の襄王に謁見したおり、王の「天下はいずれに定まるであろうか」と言う問いの中で「天と共に有るならば、誰がこれを阻むことが出来ましょうか。誠にこのようであるならば、民の帰することは水の低きに就くが如く、誰がその勢いを妨げることが出来るでしょうか」と答え、天下の人民の心中を掴めばこぞってこれを慕い望むと天下を治める要諦を説いたとされる故事である。

 これをアベノミクスに合わせるとトリクルダウンは実現するだろうか、この論理で天に慕い望まれるか不安になる。こうした理論が注目されるのは言うまでもなく格差拡大の蔓延の影響である。

 ジャネット・イエレン米国連邦準備制度(FRS)議長が、「米国の所得・富の不平等が最近100年で最も高い水準に近づき、19世紀以来最も長期にわたり拡大を続けていると警告した」との報道があるほど深刻だ。こうした現象は世界的であり、さまざまな理由がある。

 その最たるものがグローバリゼーションの落とし穴であろう。WTOなどのグローバルスタンダードに合わせて各国が平等な立場で貿易をするメリットは広く知られているが、スタンダードに合わせられない弱者も同時に存在する。私はこれを「平等の不平等」と呼び、FTA(自由貿易協定)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などグローバリゼーションの波に乗ろうとすればその数倍の努力を弱者に与えなければならないと考えている。その利益をトリクルダウンさせるためには「富者の所得」が「貧者の所得」に回らなければならないからだ。


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