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2015/05/29

<オピニオン>韓国経済講座 第174回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学大学院教授を経てアジア経済文化研究所理事・首席研究員。

  • 韓国経済講座 第174回

◆牽引車に異変?◆

 頼みの綱までも厳しい状況になった。内需、投資が低迷を続ける中、輸出が支える成長方式がこのままでは危うい。内需の低迷で最も影響を受けるのが自営業者であるといわれる。韓国は先進国と比べると自営業者が多く、例えば日本やイギリスでは12%程度であるのに対して、2014年で22・1%と倍である。しかもこの値は内需不振で低下したものである。1998年は28・2%と高く、通貨危機の企業改革によりリストラされた労働者が自営市場に流入したもので、常用労働者32・8%に肉薄していた。その後00年27・7%から05年27・0%と高水準を維持していた。しかし、10年には23・5%、12年23・2%、そして 14年の22・1%まで低下した。この低下は常用労働者への転換もあるが、長期の内需不振により廃業している者が多いという(ハンギョレ新聞15年3月6日付)。

 GDPの成長率にもこうした状況が表れている。90年から通貨危機前の97年の年平均成長率は7・5%であったものがIMF管理下の98年からリーマンショック直前の07年には4・7%と構造調整の影響が反映したが、その後この成果が表れず08年~13年には2・9%と成長率鈍化が続いている。

 こうした低迷状態を支えてきたのが輸出部門であった。08年のリ-マンショック以前は世界経済の好況で韓国の輸出先の市場需要が伸びており、輸出増加率は12%~14%の増加を示していた。しかしながら世界金融危機による世界景気低迷で輸出の伸びが急落し、13年、14年は2%台、15年に入り月別でもマイナス成長で輸出が減少し始めている(表参照)。成長のエンジンが不具合を起こしたことにより15年第一四半期のGDP成長率も0・8%の低率となった。内需を示す民間消費でも、10年には4・4%の伸びであったものが15年第一四半期には0・8%、設備投資に至っては同時期0・0%と伸びがない状況だ。

 韓国が経済成長を続けるには輸出を改めて強化する以外にはないかもしれない。

 現代経済研究院が発表した「最近輸出沈滞の要因別分析と示唆点」では、韓国の主要4大市場を韓国の輸出価格競争力と韓国からの輸入需要を考察している。それによれば、米国市場での輸出予測は、景気回復により輸出は好調に推移し需要は拡大しているとみており、また価格競争力は以前に比べると落ちているが、ドル高の影響で回復傾向にあるとしている。


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